複数の米シンクタンク、トランプ次期政権の一層の対中強硬姿勢を指摘、中国側の受け止めも解説(米国、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月25日 10時45分
米国シンクタンクのウィルソン・センターは11月21日、ドナルド・トランプ次期政権下の米中関係の見通しに関するウェビナーを開催した。同センター傘下のキッシンジャー研究所ディレクターのロバート・デイリー氏が一問一答の形式で解説した。
同氏は、米大統領選結果の中国側での受け止めについて、「中国は、トランプ前政権の対中強硬姿勢を経験済みで、トランプ次期政権下で講じられる措置が驚きをもって受け止められることはないだろう」「中国は、トランプ次期政権が発足初日から関税引き上げなどの措置を講じることを想定して準備や対策を練っている」と述べた。具体的に、「中国は貿易戦争に備えて、中国製品の新たな調達先と販売先を探している。これは現時点でかなりの成功を収めている。米国や欧州は中国製電気自動車(EV)を購入しないかもしれないが(注1)、中国製EVは比較的安価で、東南アジアや中南米、アフリカなどの市場を独占するだろう」と述べ、中国企業が、高関税の賦課が予想される米国市場からデリスキングを図り、グローバルサウスに展開する可能性を指摘した。
米国シンクタンクのスティムソン・センターは11月12日、トランプ次期政権の外交政策の見通しに関するウェビナーを開催した。同センターの専門家が米国の外交政策の方向性をそれぞれ説明した。
同センター中国・東アジア部門のシニアフェロー兼共同ディレクターのユン・サン氏は「対中政策に関する超党派のコンセンサスが存在することは周知の事実で、対中政策は一層厳しくなる」と指摘した。中国がトランプ前政権時代を一度経験していることを踏まえて、「中国側も米国側が何を望んでいるかを理解しており、関税は手段であって目的ではないと認識している」「中国の経済状況を踏まえても、(中国の報復措置は限定的で)全面的な衝突には発展しないだろう」と述べた。
同氏はまた、中国が緊張緩和に向けて、米国が懸念する貿易不均衡の是正のため、米中経済・貿易協定(注2)の合意内容の履行を検討する可能性や、米中貿易減少の影響低減に向けて、対米輸出を代替するためのグローバルサウスへの輸出機会を見いだす可能性を指摘した。同時に「中国が最も注視するのは、米国が中国の共産党体制を否定するような議論を持ち込むかどうかで、競争関係にすぎなければ中国は現実的な対応を取るが、イデオロギーに関する議論が生じれば、中国に譲歩の余地はなく、断固とした対応になり得る」とも指摘した。
(注1)米国は2024年9月に中国製EVに対する追加関税をこれまでの25%から100%に引き上げたほか(2024年9月17日記事参照)、EUは10月に最大35.3%の補助金相殺関税(CVD)の賦課を開始した(2024年11月6日記事参照)。
(注2)米中経済・貿易協定のいわゆる第1段階の合意(2020年2月21日記事参照)。
(葛西泰介)
(米国、中国)
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