トランプ氏、米商務長官に民間企業CEOのラトニック氏起用、関税政策を主導(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月20日 10時40分
米国のドナルド・トランプ次期大統領は11月19日、2025年1月に発足する次期政権の商務長官に、政権移行チームの共同代表を務めていたハワード・ラトニック氏を指名すると発表した。同氏は他国との交渉で、関税の積極的な利用を過去にメディアのインタビューで述べている。
ラトニック氏は、金融サービス企業キャンター・フィッツジェラルドの最高経営責任者(CEO)を務めており、トランプ氏は同氏について、30年以上ウォールストリートでダイナミックな力を発揮してきたと称した。また、商務長官として、米国通商代表部(USTR)と協力しながら、関税と通商政策を主導すると述べた。
トランプ政権1期目の2018年3月から賦課された鉄鋼とアルミニウム製品に対する追加関税は1962年通商拡大法232条に基づいている。232条は、商務省が調査の上で、ある製品の輸入が米国の安全保障を損なう恐れがあると判断した場合に、当該輸入を是正するための措置を取る権限を大統領に与えている。トランプ政権下では、鉄鋼・アルミ製品だけでなく、自動車・同部品、ウラン製品など複数の製品の輸入に対して、商務省が232条に基づく調査を行っていた(注1)。
米国通商専門誌「インサイドUSトレード」(11月19日)によると、ラトニック氏は過去にメディアのインタビューで、関税を「素晴らしいツール」「駆け引きの材料」と述べている。232条に基づく調査期間は最大で270日間と定められており、場合によっては、高関税を示唆して調査を開始し、調査期間内に相手国から譲歩を引き出すような状況が想定される。ただし、ラトニック氏は、米国が製造していない製品には関税を賦課せず、トランプ氏もその点を理解しているとも述べている。なお、共和党の政策綱領では、外国製品の輸入に一律10~20%の関税を賦課するベースライン関税や米国へ輸出する国が課している関税率と同じ関税率を米国輸入時にも適用するトランプ互恵通商法がうたわれている(注2)。
トランプ氏は11月18日には、運輸長官にFOXニュース司会者のショーン・ダフィー元下院議員(共和党、ウィスコンシン州)を指名すると発表した。トランプ氏は声明で、ダフィ―氏は高速道路、トンネル、橋、空港の再建を行うなどと述べている。
(注1)鉄鋼・アルミ製品を除き、追加関税賦課などの対抗措置は取られなかった。なお、232条に基づく調査は企業などからの要請だけでなく、商務長官の権限で実施することも可能。
(注2)共和党の政策綱領を基にしたトランプ氏の政策については、2024年8月9日付地域・分析レポート、2024年9月6日付地域・分析レポート参照。
(赤平大寿)
(米国)
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