米下院議員、輸出国と同じ関税率を米国輸入時にも課す「互恵通商法」案を提出(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月30日 11時0分
米国のライリー・ムーア議員(共和党、ウェストバージニア州)ら9人の連邦下院議員は1月24日、「大統領に互恵貿易やその他の目的に関して特定の措置を講じる権限を与える法(互恵通商法)」案を提出した。ドナルド・トランプ大統領は、米国へ輸出する国がある品目に対して課している関税率と同じ関税率を、米国輸入時にも課す「トランプ互恵通商法」を共和党の政策綱領に記載し、選挙公約の1つとして掲げていた(注1)。
米国通商専門誌「インサイドUSトレード」(1月28日)によると、互恵通商法案はトランプ政権1期目にショーン・ダフィー下院議員(当時、共和党、ウィスコンシン州、注2)が提出した「米国互恵通商法」案(注3)とほぼ同一の内容となっている。具体的には、外国政府がある品目に課している関税率が、米国の同品目に対する関税率よりも著しく高いと大統領が判断した場合、または非関税障壁が単独あるいは関税と組み合わさって著しく高い負担を課している場合に、外国が課している関税率と同率、または外国が課している非関税障壁の実効税率と同率の関税を米国への輸入時に課す権限を大統領に付与する。そのほか、大統領に対して、外国政府と特定の品目の関税率の削減、または非関税障壁の削減・撤廃を約束する協定を交渉する権限も付与する。
ムーア氏は、同法案の提出に際して、「米国互恵通商法案により、大統領が米国民のために尽力し、米国製品に対する関税削減を達成するために必要な影響力を与えられる」との声明を発表した。
なお、WTO加盟国は、ある一定率以上の関税を課さないことを約束する譲許税率を定めている。WTOによれば、2023年の米国の譲許税率の平均は3.4%となっており、これ以上の関税率を「互恵的に」課す場合、WTO違反となる可能性がある。
現時点で互恵通商法案の成立可能性は不透明だが、トランプ政権下の新議会の通商政策に対する姿勢を占う上で、1月23日に提出された中国との恒久的正常貿易関係(PNTR)を撤回する法案(2025年1月24日記事参照)と合わせて、今後の行方が注目される法案だ。
(注1)トランプ氏の選挙期間中の公約については2024年8月9日付地域・分析レポート、関税政策については、2024年12月10日付地域・分析レポート、2025年1月15日付地域・分析レポート参照。
(注2)連邦議会上院は1月28日、ダフィー氏を運輸長官として承認した(2025年1月29日記事参照)。
(注3)同法案は第116議会で成立せず、廃案となった。
(赤平大寿)
(米国)
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