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米下院、中国によるEV市場参入阻止にIRA要件厳格化する法案可決(米国、中国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月17日 11時55分

米国連邦議会下院は9月12日、2022年8月に成立したインフレ削減法(IRA)の下で定められた、クリーンビークル(CV、注1)購入の際に適用される税額控除(内国歳入法30D)の対象車両に課せられている条件のうち、中国を含む「懸念される外国の事業体(FEOC)」(注2)に関する要件を厳格化する「米国のEV(電気自動車)における中国優位を終わらせる2024年法案(H.R.7980)」を可決した

FEOC要件とは、懸念される外国(現時点では中国、イラン、ロシア、北朝鮮)の事業体が製造にかかわる駆動用バッテリーを搭載するCV車両について、1台当たり最大7,500ドルの税額控除の対象から除外するもの。その詳細に関し、2024年5月に財務省が最終規則を発表したほか、不明点の多かったFEOCの定義については、エネルギー省(DOE)がガイダンスを公表した(2024年5月15日記事参照)。

今回の法案は、現行の30Dを修正するかたちで、控除適用から除外する対象を拡大し、新たに「禁止する外国の事業体(a prohibited foreign entity)」と定義。FEOCのほか、対象国の政府が役員の任命権などを持つ事業体、FEOCや対象国の国民または対象国の法律に基づく組織が資本や利益の25%以上を保有する事業体などを加えた。その上で、「禁止する外国の事業体」でバッテリー材料や部品の生産や加工、リサイクルなどが行われた場合に加え、当該事業体とのライセンス契約などに基づいて設計や製造が行われ、推定契約金額が500万ドルを超える場合にも、適用外となることを明記した。

起案者のキャロル・ミラー下院議員(共和党、ウェストバージニア州)は「この法案は、中国企業が米国の製造業者向けのEV税額控除の恩恵を受けられないようにするための措置を講じている。バイデン・ハリス政権は、EV製造に使用される(中国からの)部品や技術などの関与を(FEOCの対象から)一部除外する規制によって、中国が米国のサプライチェーンに無制限にアクセスできるようにした。これは米国の製造業者と国家安全保障にとって壊滅的だ。サプライチェーンへの中国の影響を阻止するこの法案が下院で可決されたことをうれしく思う」と述べた。また、マイク・ジョンソン下院議長(共和党、ルイジアナ州)も「米国民からの税金を中国に支えられている産業のEV税額控除に使うべきではない」と述べ、中国の参入を阻止したとしてミラー議員のリーダーシップを称賛した。

一方で、自動車業界は困惑気味だ。DOEによると、7月時点で控除の対象車両は21モデルにとどまり、全CVの2割にも満たない。今回の法案可決に関し、主要自動車メーカーを代表する自動車イノベーション協会は、対象となる自動車が減り、自動車の排出ガス規制やEV目標に関する厳しい規制を撤回する必要があると述べている。また、同協会のジョン・ボゼーラ会長兼最高経営責任者(CEO)も「(排ガスなどの)基準は、EV税額控除の利用可能性に一部基づいている。優遇措置が取り除かれれば、米国の競争力は低下し、消費者の(EV購入意欲の)足元をすくうことになる」と述べた(ロイター9月12日)。同法案はこの後、議会上院で審議されることとなる。

(注1)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の総称。

(注2)インフラ投資雇用法40207(a)(5)に示される定義を採用。

(大原典子)

(米国、中国)

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