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トランプ氏勝利で左派政権の孤立深まるか、再エネ投資への影響など不安視(スペイン、米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月8日 13時40分

米国大統領選挙での共和党のドナルド・トランプ前大統領の勝利宣言を受け、ペドロ・サンチェス首相は11月6日、自身のX(旧Twitter)アカウントから短い祝福コメントを投稿し、「われわれは戦略的な2国間関係と強固な環大西洋パートナーシップの構築に向けて取り組んでいく」と呼びかけた。ホセ・マヌエル・アルバーレス外相(外務・EU・国際協力相)は同日、政権交代が与える影響について、「新政権発足前の憶測は控えたい」(「EP通信」11月6日)と明言を避けた。

第1次トランプ政権期(2017~2021年)において、急進左派と連立するサンチェス政権と米国の共和党政権との相性は良好とはいえなかったが、足元では外交方針の相違がさらに拡大している。サンチェス政権は2024年に入り、5月にパレスチナ国家を正式承認(2024年5月23日記事参照)、10月にはEUの中国製電気自動車に対する相殺関税の導入をめぐる加盟国投票で棄権(2024年10月10日記事参照)。また同月、同首相は不法移民のEU域外送還といったEUにおける移民政策の厳格化(2024年10月24日記事参照)に反対の立場を示した。多くの加盟国が右傾化するEUの中で独自の外交を展開した結果、トランプ氏の掲げる親イスラエル、反中国、不法移民排除とは対立している。

バルセロナ国際問題研究所(CIDOB)のポル・モリーリャス所長は10月に発表したレポートの中で、「EUではトランプ氏の勝利により極右政党が勢いを得る。『トランプ詣で』レースが始まり、加盟国の足並みが乱れるリスクがある」と分析している。安全保障面では、王立エルカノ財団のカルロタ・ガルシア首席研究員が、米国からNATO加盟国に国防費増額の圧力がかかれば「(GDP比2%目標を大幅に下回る)スペインが批判の矛先となる可能性もある」(「EFE通信」11月3日)とみており、サンチェス政権には逆風が予想される。

通商関係で最も懸念されるのは、一律関税や貿易戦争の影響だ。スペインはトランプ大統領第1次政権時の対EU報復・相殺関税により、容器入りオリーブ油や食卓用オリーブの輸出が影響を受けた。フォルクスワーゲン(VW)傘下のセアトは2024年3月、米国市場に投入予定の電動SUV(スポーツ用多目的車)をメキシコなどの北米で生産予定と発表したが、トランプ政権が言葉どおりにメキシコ製自動車に関税を課す(2024年10月15日記事参照)となると、同国での生産は困難になる。また、2022年に米国で施行されたインフレ削減法(IRA)が改正されれば、米国に多額の再生可能エネルギー(再エネ)投資をしているエネルギー大手が打撃を受ける。2024年11月6日のスペイン主要株価指数IBEX35は、再エネ関連株などの急落により、前日より2.9%減と年初来最大の下落幅を記録した。

(伊藤裕規子)

(スペイン、米国)

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