非友好国の知財権取引に政府の承認が必要に(ロシア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月4日 0時10分
ロシアで5月20日、知的財産取引に関する新たな手続きを定めた大統領令第430号(2024年5月20日付)が発効した。これにより、非友好国・地域(注1)の法人・自然人がロシア国内に有する知的財産の譲渡に関する取引は、外国投資管理政府委員会(以下、委員会)の承認が必要になった。科学、文芸、各種公演活動、音楽、テレビ・ラジオ放送に関係するものや1,500万ルーブル(約2,550万円、1ルーブル=約1.7円)を超えない取引は措置の対象外となる。
同様の措置は大統領令第81号(2022年3月1日付)で、ロシア企業が非友好国企業と特定の取引を行う場合に定められていた(2022年3月10日記事参照)。知財に関しては、産業商務省が2023年12月に同大統領令の改正を提起しており、今回それが具体化されたとみられる。
委員会の承認を得られた取引に関する著作権使用料などの支払いはO口座(注2)を通じて行われる。本措置は、2024年5月20日以前に取引が完了したものの、支払いが行われなかったケースにも適用される。なお取引許可の取得のほか、O口座から国外に送金を行う際にも委員会の許可を得る必要がある。
ロシアのシームレス法律事務所によると、本措置には、a.ロシア政府によるロシアからの資金の引き出しの管理のほか、b.外国の知財権保持者がロシア市場から撤退する際に知財権をロシア企業ではなく他の外国企業に譲渡することの防止する意図があるという。
市場関係者の中には、外国企業の知財権を活用し医薬品を中心とした国産化の推進や、外国企業の知財権をロシア法人が維持することでの売り上げの確保が狙い、との見方もある(コメルサント2023年12月11日)。
(注1)ロシア政府、ロシアの個人および法人に対して非友好的行為を行う国・地域。連邦政府決定第430-r号(2022年3月5日付)で規定され、その後数度にわたり改定(追加)されている。
(注2)非友好国の知財権所有者に対する使用料支払いに利用される特別口座。支払いにあたっては、委員会の許可が必要となる。
(欧州課)
(ロシア)
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