Enlit Asiaがマレーシアで開催、持続可能なエネルギー開発に日本企業も期待(マレーシア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月11日 16時15分
マレーシアの首都クアラルンプール市で10月8日から10日にかけて、東南アジア最大規模のエネルギー業界向け展示会、Enlit Asia 2024が開催された。マレーシアでの開催は、初回の2019年に次ぐ2回目。今回のテーマは「ASEANにおける多次元的エネルギー移行の実現」で、エネルギー効率、持続可能な発電、スマートグリッドの進展などの分野に、30カ国・地域超から約350社が参加し、約1万2,000人が来場したと見込まれる。
展示会場の様子(ジェトロ撮影)
アジアの市場成長に期待も、マレーシアに求められる具体的インセンティブ
日系企業でも、三菱重工業、川崎重工業、IHI、酉島製作所など各社が、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを紹介した。Enlit Asiaへのダイヤモンドスポンサーでもある三菱重工業は、世界初の水素技術統合検証施設である高砂水素パークのジオラマや、水素混焼技術を製品化したガスタービンの3D展示を披露。同ガスタービンは、東マレーシアサラワク州の発電設備にも据え付けられ、2027年の運転開始を目指す。Enlit Asiaに毎回出展してきた同社の津久井隆雄理事は「アジアのキーマンが集結する場で、ネットワーキングの面で極めて重要。今回も手応えを感じている」と評した。経済成長と脱炭素化とが必ずしも同じ方向にならないことを踏まえた上で、マレーシア政府に対しては「ガスと再エネの開発をバランスよく進め、着実に電源を確保する」ことを期待する、と述べた。
高砂水素パークについてアクマル・ナシールエネルギー移行・水資源変革省副大臣(左から2人目)らに説明する三菱重工業の津久井理事(同1人目)(同社提供)
川崎重工業は、水素事業戦略「Hydrogen Road」に基づき、「つくる」「はこぶ・ためる」「つかう」の各ステージで同社が提供する製品やサービス、例えば二酸化炭素(CO2)の回収・有効利用・貯留(CCUS)装置、液化水素運搬船、水素専焼・混焼用ガスタービン、ボイラーなどを展示。村上直樹執行役員は「アジア市場は地場のみならず日系含む外資企業が参入しているため、バリエーションに富むビジネス展開が可能」と、出展の背景を語った。現地法人カワサキ・ガスタービン・アジアの池松青史マネジング・ダイレクターは「ガスタービンコージェネレーションの主戦場はマレーシア。石油化学や油脂化学など、電気と熱を必要とする企業が顧客」と説明。期待は大きい一方、2国間クレジット制度(JCM)の不在や、活用できる具体的インセンティブが提示されないなど、マレーシア政府の後押し不足も指摘した。
川崎重工業のガスタービン模型(ジェトロ撮影)
開催初日の基調講演で、ファディラ・ユソフ副首相兼エネルギー移行・水資源変革相は、同省副大臣による代読で「マレーシアは持続可能なエネルギーの未来に取り組んでいる」「2025年までに、3,800万トン相当の温室効果ガス排出削減と、5万2,000ギガワット時の電力節約を目指す」と強調。同国がエネルギー移行に取り組む中、本展示会で共有されるさまざまな発見が課題解決に重要な示唆を与える、と期待した。
(吾郷伊都子)
(マレーシア)
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