ドイツ首相がトランプ氏に祝意表明、経済界からは懸念の声も(ドイツ、米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月8日 15時0分
ドイツのオラフ・ショルツ首相は11月6日、米国大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ前大統領の勝利が確実となったことを受け、声明を発表、大統領選挙での勝利に祝意を表した。その声明の中で、ドイツは米国にとって信頼できる大西洋を挟んだパートナーであり、EUと米国は世界で最も緊密な経済関係で結ばれたほぼ同規模の経済圏で、対立するよりも協力する方がはるかに多くのことを達成できると述べ、「私たちは一緒にいるほうが良い」と英語で呼びかけた。
ショルツ首相は、声明の最後に、「米国人が2つの主要な政治陣営の間でいかに深く分裂しているか、そしてそれが家族や友人、同僚、さらには国全体を引き裂く可能性があることを私たちは目の当たりにした。国民が団結している国ほど偉大で強くなれると固く信じている。ドイツ国民が団結し続けることを願っている」と、ドイツ国民に対してもメッセージを発した(注)。
アンナレーナ・ベアボック外相も声明を発表し、祝意を表明した。政治的な相違はあれども、ドイツは自由と民主主義の価値観で結ばれた緊密な同盟国であることに変わりはないとし、米国とドイツの強固な大西洋を挟んだ同盟関係を強調した。
ドイツ経済への負の影響は大、トランプ政権に準備ができていないとする懸念も
中国への依存からの脱却を目指すドイツ(2023年9月4日付地域・分析レポート参照)は、それと引き換えに米国への依存度が高まっている。米国は、ドイツにとってEU域外で最大の輸出国であり、2023年のドイツからの輸出額の9.9%を米国が占めている。
ドイツの主要経済研究所の1つであるケルン経済研究所(IW)は、投票に先立つ10月下旬、トランプ政権下での欧州・米国間での貿易戦争によるドイツ経済への影響額を試算し発表した。4年間の任期中に、ドイツ経済に最大で1,800億ユーロの損失をもたらす可能性があるとした。
キール世界経済研究所(IfW)のモリッツ・シュラリック所長は「ドイツ連邦共和国の歴史上、経済的に最も困難な時期の始まりを意味する」とコメント。また、ドイツ経済研究所(DIW)のマルセル・フラッシャー所長は「ドイツと欧州がトランプ大統領に対してまったく準備ができていないのではないかと懸念している。ドイツは長きにわたり自国のことばかりに気をとられ、欧州や世界に対する責任をないがしろにしてきた。そして今、そのツケが回ってきたのだ」と語った。
(注)11月6日の声明発表後、同日夜に、連立政権内の対立を受けクリスティアン・リントナー財務相の罷免を大統領に要請したと発表した(2024年11月8日記事参照)。
(中山裕貴)
(ドイツ、米国)
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