リーブス英財務相、金融改革の加速を表明、大規模年金基金の創設へ(英国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月29日 0時50分
英国のレイチェル・リーブス財務相は11月14日、ロンドン市長公邸「マンション・ハウス」で演説し、金融サービスの成長および競争力向上に向けた改革について方針を述べた(英国政府ウェブサイト参照)。リーブス財務相は、2008年の金融危機後にリスクを排除するために導入された規制変更の多くが「行き過ぎ」ており、意図しない結果を招いていると述べた。英国の世界金融センターとしての地位を当然のこととは考えず、成長に重点を置いた一連の改革に取り組むとしている。
2023年にジェレミー・ハント前財務相が発表した一連の年金改革(2023年7月21日記事参照)に続き、今回の演説ではさらに踏み込んだ、大規模な年金基金の創設など、次のことを含むさまざまな取り組みを示した。
金融サービス成長・競争力戦略を2025年春に発表予定。同戦略の中では、フィンテック、持続可能な金融、資本市場(個人投資を含む)、保険、資産管理の5つの分野を優先成長機会に特定する見込み。同戦略策定にあたり、2024年12月12日まで意見公募を実施。
確定拠出年金制度と、地方自治体年金制度を統合した、大規模な年金基金の創設を予定。オーストラリアとカナダの年金制度に倣い、企業やインフラへの約800億ポンド(約15兆4,400億円、1ポンド=約193円)の新規投資を実現。
金融行為規制機構、健全性規制委員会、財政政策委員会、決済システム規制当局に対し、成長により焦点を当てることを付託。
世界をリードする決済エコシステムを構築し、消費者と企業がそれぞれのニーズに合った決済手段を選択できるようにすることを目指す国家決済ビジョンを発表。
2025年5月までに未公開企業の株式のための市場である民間証券・資本取引制度(PISCES、注)を設立するための法律を制定。
なお、リーブス氏は、サステナブルファイナンスの分野で英国が世界のリーダーとなることを目指すと述べ、「グリーンタクソノミー」分類基準の導入についての意見公募や、ロンドン市と共同でトランジション・ファイナンス協議会を設立し助言を提供することも改革案に含めている。
また、今回の発表にあたり、政府は国際的な投資や、英国の経済パートナーとの自由で開かれた貿易がもたらす経済的機会の重要性を認識しているとし、米国との緊密な連携やEUとの関係再構築に加えて、インドや中国、湾岸諸国など、急成長している市場とも連携していくとした。
(注)株式譲渡にかかる印紙税が免除される、未公開株式の取引を行う規制市場。
(松丸晴香)
(英国)
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