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バイデン米政権、家賃引き上げ幅の制限含む新たな住宅コスト削減策発表(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月17日 13時5分

米国のバイデン政権は7月16日、家賃の引き上げ幅を実質的に制限することを含む新たな住宅コスト削減策を発表した。

今回の発表の目玉は、家賃の引き上げ上限を実質的に5%に制限する措置だ。地域によってバラつきはあるものの、米国労働省が発表した6月の消費者物価指数(CPI、2024年7月12日記事参照)で賃料は前年同月比5.1%の伸びとなっており、今回の上限はおおむね現在の上昇率の水準に合致したものといえる。貸し主がこれ以上の引き上げ幅を設定する場合、法人向けに現在行われている減価償却費の前倒し控除が適用されなくなり、不動産投資に対するインセンティブが大きく損なわれることとなる。

他方、同措置の対象となる法人は50を超える物件を有する大手不動産事業者に限られる。また、住宅の供給が不足している現状を踏まえ、新規住宅の場合や大規模改修・修繕を行った場合の例外規定も設けており、事業者側に一定程度配慮した内容となっている。同措置の実施には新たな法案が必要となるため、バイデン政権は今回の発表に際し、3月に発表した住宅金利補助などを内容とする住宅コスト引き下げ計画(2024年3月8日記事参照)と合わせ、議会に協力を呼びかけている。

家賃の引き上げ幅の制限以外にも、(1)連邦政府が所有する公有地の提供、(2)州・地方政府に対する低価格な住宅建設の呼びかけと技術支援、(3)住宅都市開発省による住宅建設への助成などの取り組みも発表した。住宅供給を増加させることで、中長期的に住宅価格の引き下げを図っていく考えだ。

住宅コストの削減は、与党・民主党にとって経済分野の最大の関心事項の1つとなっており(2024年7月10日記事参照)、11月の大統領選に向けてバイデン陣営も経済政策の中で強調している重要テーマだ。今回の発表もジョー・バイデン大統領が選挙キャンペーンの一環として激戦州の1つネバダ州を訪れている間に行われており、黒人層やヒスパニック層の取り込みを意識したと指摘される(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版7月16日)。

貧困層などの住宅に係る権利の保護を推進している全米住宅法プロジェクト(NHLP)は今回の発表について「バイデン大統領の提案は、連邦政府がいかに賃借人を保護し、権利を与える住宅政策を策定できるかを示すものだ」として歓迎している。他方で、全米住宅建設業者協会(NAHB)など住宅サプライヤー側は「いかなるかたちの家賃統制も、新たな賃貸住宅の建設を抑制し、住宅供給危機の悪化を招く」として、今回の措置が逆効果になりかねないとの懸念を示した。また、住宅コストの削減には税額控除の拡大や規制緩和などが必要と主張している。NAHBなどの主張は共和党の政策綱領(2024年7月9日記事参照)で示した方向性と整合的なものとなっており、共和党が今後こうした主張に沿ってバイデン政権への批判を強めていく可能性もありそうだ。

(加藤翔一)

(米国)

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