米エネルギー省、浮体式洋上風力のコスト削減などに向けた取り組みの進捗を発表(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月20日 10時50分
米国エネルギー省(DOE)などは5月16日、カリフォルニア州サクラメント市で浮体式洋上風力発電をテーマとする国際会議「フローティング・オフショア・ウィンド・ショット (Floating Offshore Wind Shot:FOWS、浮体式洋上風力ショット)・サミット」を開催した。
FOWSは、クリーンエネルギーへの移行を推進するDOE主導のエナジー・アースショット(Energy Earthshots、注1)の1テーマとして2022年9月に発表されたもので、2035年までに浮体式洋上風力発電にかかるコストを70%以上削減することを目指している。
同取り組みにはDOEのほか、内務省(DOI)、商務省(DOC)、運輸省(DOT)も関わっており、2回目となる今回のサミット(注2)は、現在までの進捗や今後の課題を紹介することを主な目的として開催された。同日には、DOEウェブサイトでこれら進捗や課題を紹介するレポートも公表された。
FOWSでは、重要な5本柱として、(1)「技術革新を通じたコスト削減」、(2)「国内のサプライチェーン開発」、(3)「拡大、公正、そして持続可能な導入」、(4)「送電開発」、(5)「コジェネレーション機会(水素製造との連携など)」を掲げている。サミットではそれぞれの柱に応じたプログラムの実施状況のほか、業界関係者などとの対話を踏まえて特定した短期的な優先課題などが紹介された。
これら柱のうち、(1)「技術革新を通じたコスト削減」および(2)「国内サプライチェーン開発」に関わる取り組みとしては、「浮体式洋上風力発電への対応力賞」が紹介された。これは、既存の国内サプライチェーンを活用して大量生産できる浮体式洋上風力プラットフォームの開発を促すもので、3つのフェーズを通じて計685万ドルが受賞者に与えられるという(現在は、第2フェーズが終わり、第3フェーズに進む5社が選定された段階)。一方、さらなるコスト削減に向けて今後取り組むべき短期的な優先課題も提示された。より正確な資源評価、風力変動モデリングの開発、モニタリングシステムの活用などを含む運転・保守(O&M)の高度化などが言及され、サプライチェーン強化では各地の州政府と連携する重要性が指摘された。また、知見の共有などの観点から、国際的な連携が一層重要になるとの指摘もエネルギー省関係者から述べられた。
また、地域の少数民族からは、洋上風力の計画や適地調査の段階で伝統的な生態学的知識を有する地元民の関与が不足していると反対・批判の声が出ていた(オレゴン・パブリック・ブロードキャスティング3月24日)。この点については、(3)「拡大、公正、そして持続可能な導入」の柱の下で、地元民や沿岸地域コミュニティーとのつながりを深めていくとした。
バイデン政権は、2035年までに浮体式洋上風力発電容量を15ギガワット(GW)まで拡大する目標を掲げている(2022年9月21日記事参照)。米国における洋上風力発電の潜在海域の約3分の2は浮体式が適する深い水域となっていることから、FOWSに対する期待は大きいとされる。2024年4月の岸田文雄首相訪米時の日米首脳共同声明では、日本がFOWSの最初の国際的な協力者として加わることが発表されている。
(注1)二酸化炭素(CO2)削減などを含むエナジー・アースショット(Energy Earthshots)の全8テーマは、こちらを参照。
(注2)初回の前回は2023年2月にオンラインで開催された(アーカイブ動画視聴可能)。
(平本諒太)
(米国)
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