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バイデン米大統領が連邦最高裁の改革案を発表(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月30日 10時0分

米国のバイデン政権は7月29日、連邦最高裁判所に関する改革案を発表した。大統領免責に関する憲法改正や、最高裁判事の任期制限、同判事の倫理規則制定などの内容だが、いずれも現時点での実現可能性は低いとみられる。

今回の発表では、2023年6月の大学入学選考時における「アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)」を違憲とした判決(2023年8月31日付地域・分析レポート参照)や、女性の人工妊娠中絶権を認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を破棄した判決(2022年6月27日記事参照)、2020年の大統領選挙に関しドナルド・トランプ前大統領が選挙結果を覆そうと支持者を扇動し連邦議会襲撃を促したとの疑いで起訴された事件に係る免責判断(2024年7月2日記事参照)などを念頭に、最近の判決が「公民権保護を骨抜きにし、女性の選択権を奪い、大統領に在職中の犯罪に対する訴追からの広範な免責を与えている」と非難。また、保守系の判事による汚職事件を念頭に、「一部の判事が関与する倫理的スキャンダルによって、すべての米国人に正義をもたらすという使命を最高裁が忠実に遂行するために不可欠な公平性と独立性について、国民は疑問を抱くようになった」と指摘した。

こうした認識の下、今回の発表は具体的には3つの提案を行っている。1つ目は、大統領経験者が在職中に犯した犯罪に対する免責をなくす条項(No One Is Above the Law Amendment)を憲法に明記する措置だ。本条項には、大統領職を務めたことのみを理由に、刑事訴追や裁判、有罪判決、量刑に対する免除が得られるものではない旨を明記するとしている。2つ目は、判事の任期制限だ。現在、連邦最高裁の判事は終身制となっているが、これを18年に制限する案を提示している。9人の判事を2年ごとに任命する方式で、構成員が定期的に交代することにより、1つの政権が将来に過剰に影響を及ぼすことを避ける狙い。3つ目は、贈与記録の公開、政治活動の抑制、裁判官自身や家族に金銭的またはその他の利益相反がある事件への審理不参加、の3点に係る拘束力のある倫理規則の制定だ。

ただし、これら提案のうち、任期制限と倫理規則の制定は連邦議会の承認が必要となり、上下院ともに承認は困難とされる。また、1つ目の憲法改正はさらにハードルが高い(注)とされ、いずれも現時点での実現可能性は低いとみられる。ジョー・バイデン大統領も、以前には最高裁判事の人数拡大をはじめとする改革に否定的な姿勢を示してきた(ワシントン・ポスト7月29日)。しかし、人工妊娠中絶に関する判決や、シェブロン法理をめぐる判決(2024年7月24日記事参照)など、最高裁から示される判決は大統領選挙の争点と密接に結びつくものも少なくない。今回の最高裁改革に関する政権の提案は選挙向けのアピールという側面が強いとみられるが、判決にとどまらず、司法の在り方についても11月の大統領選の争点の1つとして今後、注目を集める可能性がありそうだ。

(注)憲法改正には、両院の3分の2以上の議決または3分の2以上の州による議決を経たのち、4分の3以上の州が承認する必要がある。

(加藤翔一)

(米国)

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