米財務省、インフレ削減法に基づくクリーン燃料クレジットのガイダンス案発表(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月14日 15時0分
米国財務省は1月10日、インフレ削減法(IRA)に基づくクリーン燃料生産クレジット(IRC45Z)に係るガイダンス案を発表した。同クレジットは、持続可能な航空燃料(SAF)などの輸送用燃料を生産・販売した場合に、最大で1ガロン(約3.8リットル)当たり1.75ドルの税額控除(注1)を付与するもので、1月1日から2027年12月31日までに生産・販売された場合に対象となる。
今回発表したガイダンス案では、(1)対象主体の明確化、(2)対象燃料の明確化、(3)クレジットの算出に必要な二酸化炭素(CO2)排出量の算定ルールの明確化などをしている。(1)に関しては、クリーン燃料生産者として登録され、燃料を生産する者のみが対象となり、燃料の調合のみを行うブレンダーや圧縮プロセスのみを行うコンプレッサーなどは対象とならないことを示した。(2)については、燃料として「使用に適している」もので、熱や電力を供給するために消費できる液体または気体の物質であること(注2)、排出量が一定水準を超えないものであること(注3)などを示した。(3)に関しては、国際民間航空のためのカーボンオフセット、削減スキーム(CORSIA)プログラムや「45ZCF-GREET」と名付けられたモデルなどに沿って排出量を算定することを求めている(注4)。45ZCF-GREETモデルの詳細は近日中に発表される予定だ。
また、今回のガイダンス案には組み込まれていないが、クリーン燃料の原料となるトウモロコシや大豆などに関し、気候スマート農業(CSA)によって生産された場合には、上記(3)の排出量の算定で有利になる追加ガイダンスの発行なども予定しているとも発表している。
バイデン政権は退任直前に、クリーン燃料に関するガイダンス案の発表を何とか滑り込ませたかたちだが、業界からは今回の内容では不十分との意見も聞かれる。再生可能燃料協会(RFA)のジェフ・クーパー会長は、CSAの統合や45ZCF-GREETモデルの詳細が発表されていないことを念頭に、「ガイダンス案は期待に応えていない。これだけで、議会と政権が意図したクリーン燃料分野への投資や、技術革新、雇用創出が促進されるとは思えない。大多数のバイオ燃料生産者にとっては、投資可能、あるいは実行可能なものではない」と述べ、明確化を急ぐよう求めた。
今回のガイダンス案は90日間のパブリックコメントを経た後に最終規則化されるため、トランプ次期政権下での公布・施行となる。バイオエタノール生産に対しては、農業が盛んな州から選出された議員を中心に支持が高いとされるものの、IRAの先行き自体が不透明な上、気候変動対策自体に否定的なスタンスを示すドナルド・トランプ次期大統領がガイダンスにどのような判断をするのかは予断を許さない状況だ。
(注1)SAFの生産・販売で、かつ賃金・見習い要件(2024年6月21日記事参照)を満たす場合の額。同要件を満たさない場合には、最大0.35ドルとなる。また、航空燃料以外の輸送用燃料の場合には1ガロン当たり最大1ドルが付与される。
(注2)電力はこの定義から外れるほか、45Yなどで税額控除の対象となっていることから、45Zの対象とはならないとしている。
(注3)具体的には、1ミリメートルBTU(英国熱量単位)当たり50キログラムを超えないことを求めている。
(注4)生産する燃料によって算定に用いるモデルが異なる。詳しくはガイダンス案の別表を参照。別表に掲げられていないものについての算定方法は、後日公表の予定。
(加藤翔一)
(米国)
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