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5月の米個人消費支出、インフレ率低下と賃金上昇で所得、消費ともに拡大(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月1日 14時55分

添付資料PDFファイル(150 KB)

米国商務省は6月28日、5月の個人消費支出(PCE)を公表した。インフレ率の低下と賃金上昇に伴い所得環境が改善し、レジャー関連需要の高まりもあり、消費支出は増加した。

所得関連では、個人所得が名目ベースで前月比0.5%増(前月0.3%増)と市場予測(0.4%増)をわずかに上回った。内訳をみると、雇用者報酬が0.6%増(寄与度0.4ポイント)と大きく伸び、押し上げの主因となった。5月の雇用統計(2024年6月10日記事参照)で見られた賃金の伸びの加速と整合的な動きになっている。税を除いた可処分所得は名目ベース、実質ベースともに前月比0.5%増だった。名目可処分所得の使途をみると、消費支出が0.2%増(0.23ポイント)、利払い費が0.2%増(0.00ポイント)、貯蓄が4.9%増(0.18ポイント)となっている。貯蓄率は3.9%と引き続き低い水準だが、前月(3.7%)から若干改善した。インフレの緩和が寄与したとみられる(添付資料表1参照)。

名目個人消費支出は前月比0.2%増だった。財部門(寄与度0.07ポイント)では、レクリエーショングッズ(0.03ポイント)や衣料品(0.02ポイント)、その他非耐久財(0.07ポイント)などが押し上げに寄与し、価格低下に伴うガソリン(マイナス0.05ポイント)のマイナスを相殺した。サービス部門(0.18ポイント)では、価格上昇に伴いヘルスケア(0.14ポイント)、住居(0.05ポイント)などが押し上げに寄与した(添付資料表2参照)。

実質ベースでの個人消費支出も前月比0.3%増と増加した。押し上げに寄与したのは主に財部門(0.20ポイント)で、レクリエーショングッズ(0.13ポイント)やガソリン(0.03ポイント)などのレジャー需要、衣料品(0.04ポイント)の増加が要因。サービス(0.06ポイント)でも、レジャー需要の増に伴い輸送サービス(0.04ポイント)が増加したが、外食サービス(マイナス0.03ポイント)がマイナスとなるなどまちまちの結果で、消費の伸びが持続するかどうかは不透明な状況だ。

物価関連では、PCEデフレーターは前年同月比2.6%増と前月(2.7%増)から伸びが低下したほか、前月比では横ばいとなった。食料・エネルギーを除くコア指数の伸びも前年同月比2.6%増(2.8%増)、前月比0.1%増(0.3%増)と低下した。これらの結果は、市場予測と一致している。前年同月比の内訳では、サービス部門が押し上げに寄与し、住居費(5.4%増)、医療サービス(3.1%増)、金融サービス・保険(5.4%増)の高止まりが目立つ。一方、押し下げに寄与したのは、レクリエーショングッズ(3.2%減)など耐久財が中心だった(添付資料表3参照)。

5月は賃金が上昇、インフレ率が低下した結果、所得や消費に関する指標が改善しており、インフレの動向が米国経済のカギを握っていることをあらためて示す結果となった。インフレ率の低下に関しては、サンフランシスコ連銀のメアリー・デイリー総裁が「金融政策が機能し、インフレが徐々に沈静化しつつある」と述べるなど歓迎の声が上がる(CNBC6月28日)。しかし、PCEデフレーターの低下は財部門によるもので、物価において大きなウエートを占める住居費の低下の足踏みや賃金上昇など課題が残る内容だ。ブルームバーグ・エコノミクスのスチュアート・ポール氏らが「ディスインフレ(注)のプロセスが持続するかどうかは懐疑的であり、動きが遅く、粘着的なコアサービス分野が年後半のインフレ率を押し上げる可能性が高い」と述べるように、インフレ率が持続的に低下するかどうかはなお予断を許さない状況で、連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを決断するには今しばらく時間が必要なようだ。

(注)インフレーションを脱したが、デフレーションには至っていない状態。

(加藤翔一)

(米国)

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