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ジェトロ、EPA活用メリットを機械・精密加工品分野の事例から紹介(日本、EU、インド、ASEAN、マレーシア)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年8月6日 0時10分

ジェトロは7月19日、ウェビナー「活用事例から考えるEPAの活用メリットとは-機械・精密加工品を参考に-」を開催した。このウェビナーではEPA(経済連携協定)活用によるメリットが大きい商品群の1つの機械・精密加工品に焦点を当て、企業での活用事例を取り上げた。

ウェビナー前半では、EPAを積極的に利用している企業として、野口精機(埼玉県東松山市、精密加工品など)、大武・ルート工業(岩手県一関市、自動ねじ供給機など)、キヤノン(東京都大田区、プリンター/部品など)の3社が登壇し、EPA活用のきっかけや実際にあった課題とその解決方法を共有した。後半では、ジェトロの中畑貴雄主任調査研究員がEPAの活用に必要な実務面での知識を解説した。

前半パートでは、EPA活用の重要なポイントとして、まず社内の他部署や社外も含めた体制作りが挙がった。キヤノンではEPAの統括部門があり、全社統一的なEPA利用可否の判断や原産地判定、社内やサプライヤーからの必要書類の入手を行っている。また、同社はEPA利用開始後も材料・部品の変更や検認に対応するため、継続的に原産性の確認ができる体制づくりも重要だと指摘した。野口精機は、自社の加工工程はHSコード4桁の変更がなく、原産性を証明することが難しかったが、サプライヤーなどの協力を得て原価表や図面を用意し、加工していることを証明している。

EPAを効果的に利用するための工夫も紹介された。大武・ルート工業は、当初は付加価値基準で原産性を証明していた。しかし、鋼材の廃材利用の算出や、素材・部品価格、為替の変化に対応した部品価格算出などの定期的なメンテナンスによる事務コストが大きく、関税分類変更基準での証明に切り替えたという(注1)。キヤノンは、日本からマレーシアへの輸出の際、日本・マレーシア経済連携協定(EPA)を使用すれば関税率は25%から0%に減免されるものの、シンガポールを経由した輸送ルートを使用することもある。その際、連続する原産地証明書(Back to Back C/O、注2)を利用できる日本・ASEAN包括的経済連携(AJCEP)を活用し、関税率を5%まで減免している事例を紹介した。

後半パートでは、中畑主任調査研究員は「協定があっても利用しなければ、関税メリットは受けられない」と強調した上で、関税率の調べ方や原産性判定基準の重要な点などを解説した。ジェトロが独自に調べた結果、特に先行活用業種の自動車産業や鉄鋼以外で、比較的メリットを受けられる分野が一般機械・器具製品、加えて、化学品やプラスチック、ゴム製品、繊維製品、金属加工品、精密機器などの品目で、EPA活用による関税メリットがあることも紹介した(注3)。

同ウェビナーは一般機械(電気・情報・電子・精密)を取り扱う製造業を中心に、500人以上が視聴した。質疑応答では、EPA活用に係る社内体制の規模や事前教示制度の注意点など、実務的な質問が寄せられた。

同ウェビナーは10月28日までアーカイブで配信している。

(注1)関税分類変更基準では、非原産材料と輸出製品の間のHSコードの違いを証明できればよく、材料や部品などの調達コストが変化しても影響を受けない。詳しくは「経済連携協定の原産地規則」を参照。

(注2)輸出締約国の最初の原産地証明に基づいて、経由国である締約国(中間締約国)の発給機関などが発給することができる原産地証明。詳しくは「EPA活用マニュアル」日本・ASEAN包括的経済連携境地(AJCEP)版を参照。

(注3)ジェトロへのEPA活用に関する相談が多い輸出相手国で、日本からの輸出額が多い物品(HSコード6桁別、自動車産業・鉄鋼・資源以外)を輸出する際に、日本と締結するEPAを利用した場合の関税メリットを調べた。

(加藤遥平)

(日本、EU、インド、ASEAN、マレーシア)

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