GNU(国民統一政府)発足から100日(南アフリカ共和国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月21日 0時20分
南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ大統領は10月14日、国民統一政府(GNU)の発足から100日が経過したことを受け、アフリカ民族会議(ANC)支持者に向けて演説を行った。懸念されたGNU内のイデオロギーの違いは、雇用創出や貧困削減、有能な国家の建設を主要優先事項とする新政権の持続可能性の障害にはならないと強調した。
1994年の全人種参加による初の民主的選挙から30年、ANCは一貫して多数与党として単独政権を担ってきたが、2024年5月の総選挙で初めて過半数割れした(2024年6月3日記事参照)。ラマポーザ大統領はこの選挙結果を振り返り、経済や失業、貧困、不平等に対する国民の不満があったことをあらためて認めた。しかし、このことがGNU結成の原動力であり、新政権の最初の100日間が雇用創出や工業化促進を目指した経済成長に重点を置き、投資家の信頼回復につながっていると自信を見せた。
その上で「私たちは、一部の政党との間に大きなイデオロギー的、政治的意見に相違があることを十分に承知した上で、GNUに参加した。意見の異なる根本的な問題があり、それがGNUに緊張とゆがみをもたらすことは分かっていた」とし、一方で「国民の多くがGNUを支持し、GNUの考えを受け入れる多くの調査結果が出ている。GNUの取り組みは全く新しく始まったものではなく、多くは第6次ANC政権までに行われてきた政策を引き継いでいる」とも付け加えた。
とはいえ、GNUはANCとその同盟パートナーの間に隙間風を吹かせている。南アフリカ共産党(SACP)は、その成り立ちからANCの最も激しい対抗相手だった民主同盟(DA)やFF+(自由戦線プラス)を含む連合を結成したことで、「イデオロギー的原則を無視している」と強く非難している。
GNU内でも、教育基本法改正法を巡ってANCとDAが対立し(2024年9月24日記事参照)し、一時はDAがGNUからの離脱をほのめかすなど、緊張が高まった。さらに、行政首都ツワネ市(旧プレトリア市)のシリエス・ブリンク市長(DA出身)の解任(注)を巡っても、DA側の反発が強まっている。
ご祝儀期間が過ぎた南ア新政権は、山積する経済や社会の課題への対応とともに、立ち位置の異なる構成政党をどのようにまとめていくかに直面し始めた。ラマポーザ大統領の手腕が問われるのはこれからだ。
(注)ANCが提起し、アクションSAなどの政党が支持した不信任投票により、民主同盟(DA)のツワネ市長のシリエス・ブリンク氏が解任された事件。南ア地方自治体労働組合の組合員らは、ブリンク氏が就任して以来、賃金要求に応じないなどで同氏と対立していた。
(的場真太郎)
(南アフリカ共和国)
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