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フランス原子力燃料大手オラノ、ウラン濃縮施設建設候補地として米テネシー州を選定(米国、フランス)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月10日 0時10分

米国テネシー州のビル・リー知事(共和党)は9月4日、フランスの原子力燃料大手オラノの子会社のオラノUSAが、数十億ドルを投じて最新鋭の遠心分離機を備えたウラン濃縮施設を建設する候補地として、同州オークリッジ市を選定したと発表した。

世界原子力協会(WNA)によると、ウラン濃縮施設を運営する事業者は世界でも少数で、2020年のウラン濃縮能力はロシアのロスアトム(シェア:46.0%)、ドイツ、オランダ、英国の合弁会社のウレンコ(30.9%)、フランスのオラノ(12.5%)、中国のCNNC(10.5%)の4社で占められている(注1)。米国では2024年5月に「ロシア産ウラン輸入禁止法(H.R.1042)」が成立し、ロシア政府またはロシアの事業体が生産した低濃縮ウラン(LEU)の米国への輸入が8月11日から禁止されている(注2、2024年5月17日記事参照)。一方、米国エネルギー省(DOE)は2024年6月、米国内供給源からのLEU購入のための提案依頼書(RFP)を発行し、米国内での原子力燃料サプライチェーン強化に27億ドルを拠出すると発表し、米国内でのウラン濃縮能力の構築に取り組んでいる。

今回、オラノが建設するウラン濃縮施設は約75万平方フィート(約7万平方メートル)に及び、北米最大級の商業生産施設となる見込みで、300人以上の新たな雇用を生み出す予定だ。テネシー州は2023年5月、同州における原子力のエコシステム構築に向けた継続的投資を促進するためのテネシー州原子力諮問委員会を設立したほか、同州の原子力開発と製造エコシステムをサポートするべく、5,000万ドルの原子力基金を設立し、原子力関連企業の同州へ移転などを支援している。2024年2月には、ステラレータ型核融合技術を開発するタイプ・ワン・エナジーが同基金を活用して、2億2,350万ドルを投じて同州東部のノックスビル地域に本社を設立すると発表された。オラノも同基金からの支援を受ける予定で、同基金を活用した企業は2社目となる。

オラノのウラン濃縮施設が建設される予定のテネシー州オークリッジ市は、1942年に開始された国家軍事プロジェクトの「マンハッタン計画」における3つのオリジナルサイトの1つとしてウラン濃縮施設が立地していたこともあり、原子力関連産業が集積している(注3)。さらに、オークリッジ市にはDOE管轄のオークリッジ国立研究所が立地しており、原子力関連の研究が行われている。

(注1)極めて小規模ながらも、日本やブラジルもウラン濃縮能力を保持している。

(注2)米国エネルギー長官が、低濃縮ウランの代替可能な供給源がなく、ロシアからの輸入が国益にかなうと判断した場合、一定の輸入量の制限の下、2028年1月1日までは特別に輸入が許可される一方、2028年以降は、例外規定はない。

(注3)東部テネシー経済協議会によると、2023年時点でテネシー州には229社の原子力関連企業が立地しており、そのうち154社が同州東部のオークリッジ・ノックスビル地域に立地している。

(檀野浩規)

(米国、フランス)

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