米商務省、半導体製造装置を中心とした新たな対中輸出規制を発表(米国、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月3日 11時40分
米国商務省産業安全保障局(BIS)は12月2日、中国に対する半導体の輸出管理強化を発表した。発表は大きく2つに分かれており、特定の半導体製造装置(SME)を新たに輸出規制対象とする暫定最終規則(IFR)と、140の事業体をエンティティー・リスト(EL)へ追加する最終規則となっている。いずれも、12月5日に官報で公示予定だが、規則自体は12月2日に発効した(注1)。
BISによると、今回の目的は、「中国による、戦争の未来を変える可能性を持つ先進的な人工知能(AI)の開発の遅延」「中国による独自の半導体エコシステム開発の阻害」の2つ。規制対象となるSMEは、先端兵器システムや軍事用途で使用される先進的なAIに必要な先端ノード集積回路(IC)の製造に必要だとしている。規則の概要は次のとおり。
〇特定のエッチング、蒸着、リソグラフィー、イオン注入、アニール(熱処理)、計測、検査、クリーニングツールなど、先端ノードICの製造に必要な24種類のSMEを規制対象に追加。
〇先端機械の生産性を向上させたり、性能の劣る機械で先端チップの製造を可能にしたりする、先端ノードICの開発、製造に必要な特定のソフトウエアを規制対象に追加。
〇米国原産の高帯域幅メモリ(HBM)および、先進コンピューティングに対する外国直接製品(FDP)ルールに基づき米国外で生産されたHBMを規制対象に追加。ただし、一部のHBMは、輸出許可(ライセンス)例外の対象となる。
〇140の事業体のELへの追加。中国の先端半導体製造の目標を推進するため、中国政府から指示を受けて活動する半導体工場や投資会社などが含まれる。
〇2つの新しいFDPルールの制定と、それに伴うデミニミス条項の制定。具体的には次のとおり。
米国外で生産された特定のSMEおよび関連品目が、マカオまたは国別グループD:5(注2)へ輸送されるという「知識」がある場合、輸出規制対象とする。
ELで脚注5の指定を受けた事業体が、特定のSMEおよび関連品目の生産などに関与しているという「知識」がある場合、輸出規制対象とする(注3)。
上述のFDPルールの対象となる、米国製のICが含まれる非米国製SMEおよび関連品目に対して、デミニミスルール(注4)を適用しない条項の設定。
〇マカオまたは国別グループD:5で製造される先端ノードICの設計に使用されるとの「知識」がある場合、電子コンピュータ支援設計(ECAD)および技術コンピュータ支援設計(TCAD)のソフトウエアと技術を輸出規制対象とする。
〇特定のハードウエア、ソフトウエアへのアクセス、または既存のソフトウエア、ハードウエアの使用ライセンスの更新を可能にするソフトウエアキーの輸出、再輸出、国内移転にも規制が適用されるとする輸出管理規則(EAR)の明確化。
ただし、日本など特定の国は、SMEに関する新たな輸出規制の対象外となる。
商務省のジーナ・レモンド長官は「今回の措置は、同盟国およびパートナー国と協調しながら、わが国の国家安全保障にリスクをもたらす先端技術を自国内で生産する中国の能力を損なわせるという、バイデン・ハリス政権の的を絞ったアプローチの集大成だ」と述べた。BISは2022年10月以降、半導体の対中輸出管理の強化を3度発表してきた(2022年10月11日記事、2023年10月18日記事、2024年4月8日記事参照)。今回の規則は、これら一連の規制強化に続くものになっている。
(注1)ただし、IFRで示された規則のほとんどは12月31日まで順守の猶予期間がある。また、IFRに対しては、2025年1月31日までパブリックコメントを受け付ける。コメントは連邦政府のポータルサイト(BIS-2024-0028)から提出可能。
(注2)EARの国別グループD:5には中国が含まれる。
(注3)脚注5には、軍事目的で先端ノード半導体を製造し、中国軍の現代化を支援するなど、安全保障上または外交政策上の懸念事項を理由にELに掲載されている事業体が指定される。
(注4)再輸出される米国原産品などの価額が、製品の全体の価額の一定の割合(デミニミス)以下であれば、商務省からの輸出許可などを必要としない規定。
(赤平大寿)
(米国、中国)
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