タジキスタンの首都でEVタクシー導入へ(タジキスタン)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月13日 1時20分
タジキスタンの首都ドゥシャンベのルスタム・エモマリ市長は6月4日、市長決定「タクシー車両の電気交通システムへの完全移行について」に署名し、市内のタクシー事業者に、2025年9月1日までに電気自動車(EV)に完全移行すること義務付けた。
市長決定によると、この措置は国の「2023~2028年のタジキスタン共和国における電気交通開発プログラム」と、同市のグリーンシティ・プロジェクトの実施を確実にするために講じられるもの。前者は、タジキスタンの経済状況の改善と気候変動対策として2022年に策定された。同プログラムを規定する政府決議(注1)では、タジキスタンのEV市場は形成期にあり、開発の伸びは弱いと評価している。原因として、EVの価格の高さ、充電・サービス用施設の不足、奨励策の欠如、投資先としての魅力の低さなどを挙げている。同プログラムはEV輸入を増やすだけでなく、将来的な国内生産をも視野に入れており、EVのシェアを20~30%に拡大する計画だ。これにより雇用の創出、輸入燃料への依存度低下、温室効果ガス排出量の削減といった効果が期待されている。
タジキスタン運輸省によると、2024年3月1日現在、同国の自動車登録台数は66万6,074台(うち乗用車は約56万2,000台)で、過去1年間で6万4,938台(10.8%)増加した。ほとんどがガソリン車かディーゼル車だが、ニュースポータル・ボムドド(6月9日)によると、EVも輸入台数でみると2021年47台、2022年767台、2023年約1,500台と着実に増加している。
2022年にタジキスタンの税法が改正され、10年間にわたり、EVを輸入する際の関税、付加価値税と物品税が免除されることになった(国営通信「ホバル」2022年3月14日)。首都のタクシーをEVに替えるという政策は、このような傾向を背景にタイムリーなものと受け止められている(ニュースポータル・ボムドド6月9日)。
中央アジアでは、ウズベキスタンを中心に中国ブランドのEV輸入が急増しており、2024年中に同国において中国との合弁工場での生産も本格的に始まる見通し(注2)。中国のEVメーカーも、高い輸入関税を課される米国や欧州の市場をターゲットとみなさず、中東や中央アジアの市場に力を入れている。このような状況を背景に、タジキスタンでも中国ブランドのEVの普及が進むとみられる。
(注1)2022年10月31日付タジキスタン共和国政府決議第532号「2023年から2028年までのタジキスタン共和国における電気交通開発プログラムについて」。
(注2)中国のEV大手BYDが2024年1月にウズベキスタンで地場企業との合弁工場の生産開始式を開催したが(2024年2月2日記事参照)、同社ウェブサイトに掲載された幹部のインタビュー記事(3月25日)によると、生産ラインの設置・立ち上げ作業が続いており、本格的な出荷は第3四半期になる見込み。
(小林圭子)
(タジキスタン)
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