米商務省、デジタルツイン研究所設立、運営主体にセミコンダクター・リサーチ・コーポレーション選定(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月21日 13時5分
米国商務省は11月19日、半導体研究コンソーシアムのセミコンダクター・リサーチ・コーポレーション(SRC)との間で、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に基づき、半導体研究機関の設立・運営に2億8,500万ドルを供与することについて協議に入ったと発表した。
商務省は2024年5月、CHIPSプラス法に基づく半導体産業のデジタルツイン(注1)技術開発へ最大約2億8,500万ドルの資金援助を発表していた(2024年5月7日記事参照、注2)。SRCは1982年設立の世界的コンソーシアムで、産官学のパートナーと協力し、会員企業に代わって大学での研究への資金提供や管理を実施している。
新設される研究所は、SMART USA (Semiconductor Manufacturing and Advanced Research with Twins USA)という名称で、ノースカロライナ州ダーラムに本部を設置する。先端パッケージング、組み立て、テストといった半導体製造プロセスを強化するためのデジタルツインの開発、検証、適用に重点を置く。また、半導体製造プロセスフローのため、全米を対象としたオープンソースのデジタルSMARTバックボーンを構築することで、チップ設計にかかる時間とコストを削減し、国内生産の効用を向上させ、チップ製造を米国に回帰させることを目指す。具体的目標として、5年以内にチップ開発・製造コストの35%以上の削減、開発サイクルの時間を30%削減、半導体製造に伴う温室効果ガス(GHG)排出を25%削減、10万人以上の労働者や学生を対象としたデジタルツイン教育などを掲げている。
また、SMART USAは、米国先端産業分野の産官学パートナーシップであるマニュファクチャリングUSA(注3)の既存ネットワークに、商務省がバイデン政権下で初めて立ち上げた研究所として加わる。加えて、同研究所へは、30州以上から150を超える産学およびサプライチェーン全領域の団体・企業の参加が予定されているほか、10の国立研究所、5つのマニュファクチャリングUSA研究所などとの協業が予定されている(注4)。
ジーナ・レモンド商務長官は「新たなデジタルツインの可能性により、米国は世界中の専門家や研究者と協力して、半導体産業の技術進歩のフロンティアを開拓する比類ない機会を育んでいる」と述べた。また、デビッド・ヘンシャルSRC事業開発担当副社長は「SMART USAは、米国のデジタルツイン技術を発展させ、それを半導体サプライチェーン全体に適用することで、迅速なプロセス最適化、予見的な保守・整備、サプライチェーン寸断への素早い対応を可能にする」と強調した。
(注1)仮想空間に現実空間の双子(ツイン)となる環境を再現し、製品や設備などに関するさまざまなシミュレーションを行う技術。これにより、製品や設備などの生産の最適化や業務効率の向上、開発期間やコストの削減などが見込まれる。
(注2)この資金援助は、CHIPSプラス法の資金援助のうち、半導体産業の研究開発を行う企業・団体に対する110億ドルの資金援助の中の半導体製造研究所の事業に該当する。
(注3)先進製造業で世界的リーダーシップを確保する目的で、2014年に設立された米国の産官学パートナーシップ。米国商務省、エネルギー省、国防総省、この3省が支援する技術革新研究機関(現在17機関)、6連邦政府機関で構成され、製造業のイノベーションを推進する政府全体の国家的取り組みを構築している。
(注4)SRCによると、SMART USAの設立構想には、半導体大手のアドバンスト・マイクロ・デバイセズ、IBM、インテル、マイクロン・テクノロジー、テキサス・インスツルメンツ(TI)、ジョージア工科大学、パデュー大学、ニューヨーク州立大学などが協力した。
(横山華子)
(米国)
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