バイデン米政権、デミニミス利用した不公正な輸入に対処する新たな措置発表(米国、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月17日 14時30分
米国のバイデン政権は9月13日、非課税基準額(デミニミス)ルールを利用した不公正な米国への輸入に対処するための新たな措置を講ずると発表した。デミニミスの対象から追加関税対象品目を除外する行政措置のほか、繊維・アパレル製品などを対象から除外するよう連邦議会に法制度化を求める内容となっている。米国では、デミニミスを利用した不公正な輸入の増加が以前から問題視されていた(注1)。
輸入貨物の申告額が800ドル以下の場合、米国ではデミニミスルールの下、関税が賦課されず、また原産地などの情報を申告せず、簡易的に輸入できる。そのため、フェンタニルなどの違法合成麻薬などがデミニミスを利用して輸入されているのではないかと懸念されていた。直近では、ロサ・デラウロ連邦下院議員(民主党、コネティカット州)ら126人の民主党の下院議員が9月11日に、ジョー・バイデン大統領に対して、デミニミスを利用した不公正な輸入に対処するための措置を講ずるよう求める書簡を送っている。今回、バイデン政権が発表したファクトシートによると、過去10年間でデミニミスを利用した輸入は年間約1億4,000万件から10億件を超えるまでに増加した。また、デミニミスを利用して輸入される貨物の大半は、中国の電子商取引(EC)を通じて行われているという。こうした事態を受け、政権は今後、次の措置を取ると発表した。
デミニミスによる輸入量削減を目的とした措置:1974年通商法201条または301条、1962年通商拡大法232条に基づいて関税が課されている品目をデミニミスの対象から除外する規則制定案告示(NPRM)を公示する(注2)。
米国の消費者、労働者、企業を保護するための措置:デミニミスを利用して輸入する貨物に対して、10桁の関税分類番号や申請者の情報を求めるなど、情報収集を強化するためのNPRMを公示する。消費者製品安全委員会(CPSC)は、安全基準の迂回防止のため、輸入時に税関・国境警備局(CBP)、CPSCに対して、適合証明書(CoC、注3)の提出を義務付ける最終規則を公示する。
デミニミスに関する包括的な法改正の要請:繊維・アパレル製品など米国にとってのセンシティブ品目(注4)をデミニミスの対象から除外するなどの法改正を行うよう議会に要請する。
米国の繊維・アパレル製造業者を保護するための措置:ウイグル強制労働防止法(UFLPA)のエンティティー・リストの拡大を通じて、繊維・アパレル製品の不正輸入に対する取り締まり強化などを行う。
ホワイトハウスのダリープ・シン国家安全保障担当副補佐官(国際経済)は今回の発表の前日の9月12日の記者会見で、これら措置が実行されれば、「デミニミスを利用して輸入される貨物は激減するだろう」と述べた。また、政権高官によると、今回発表した2つのNPRMは、バイデン大統領の任期終了前までにCBPが公示し、パブリックコメントを募集する。CPSCによる最終規則は、2024年秋以降に公示予定という(米国通商専門紙「インサイトUSトレード」9月13日)。
なお、連邦上院財政委員会のロン・ワイデン委員長(民主党、オレゴン州)らが既に、繊維・アパレル製品などをデミニミスの対象外とする法案を提案しているなど、今回、バイデン政権が発表した規制の幾つかは、議会でも並行して法制度化が検討されている。
(注1)例えば、2023年6月26日記事、2024年7月11日記事参照。
(注2)米国は201条に基づき、両面太陽光パネルなどに緊急輸入制限措置(セーフガード)を課している。また、301条に基づき、中国原産品に対して最大25%、232条に基づいて、鉄鋼・アルミニウム製品にそれぞれ25%、10%の追加関税を課している。なお、アンチダンピング税(AD)、または補助金相殺関税(CVD)の対象となる製品は、既にデミニミス対象から除外されている。
(注3)CoCは、生産・加工・流通など各段階で製品が適切に管理されていることを証明するもの。認証スキームによって、求められる審査基準は異なる。
(注4)センシティブ品目は、当該国にとって重要、かつ輸入の増加により悪影響を受けるおそれが高い品目を指す。
(赤平大寿)
(米国、中国)
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