「パクリ」と「著作権侵害」の境界線
JIJICO / 2014年8月24日 15時0分
「パクリ」と「著作権侵害」の境界線
「パクリ」と「著作権侵害」は異なる
押切蓮介氏の連載漫画「ハイスコアガール」について、連載の一時休載や単行本の回収等が話題になっています。ゲームソフト会社が、自社のキャラクターを漫画の中で無許可使用されたとして、著作権法違反で販売元のスクウェア・エニックスを刑事告訴したのが発端です。
「ハイスコアガール」は、1990年代の日本が舞台。アーケードゲームや家庭用ゲーム機に夢中な少年と少女の物語です。作中には必然的に当時のゲーム画面が登場しますが、それだけでなく、主人公の心の中でゲームキャラクターが語り掛けたりもします。
ゲームに限らず、既知のキャラクターの使用はコンテンツビジネスでは重要な問題です。まず、大きなポイントは、いわゆる「パクリ」と著作権侵害が異なるという点。例えば、「未来からやってきた青色のずんぐりしたネコ顔のロボットと、ちょっと頼りない少年との交流を描く小説(イラストなし)」を書いたとしましょう。誰もが「あの有名な漫画のパクリだ」と非難するかもしれません。しかし、これは著作権法違反には当たりません。著作権は、あくまでも具体的な表現を保護するものです。容貌や性格上の特徴といった抽象的な人物像としての「キャラクター」自体は、著作物ではないというのが判例です。
大手出版社の商業作品として無許可使用は問題
また、引用も著作権侵害ではありません。例えば、有名なアニメについての評論記事を書いたとしても、一定の要件を満たせば、著作権者に承諾を得ずに絵を掲載することが可能です。しかし、明らかに特定のキャラクターを連想させる漫画を無断で描けば、これは著作権侵害になります。この場合、ストーリーがオリジナルであれば、それは新たな創作的要素を加えた二次著作です。知名度の低い作品が、ファンの二次著作で盛り上がって原作の宣伝になるケースもあります。しかし、だからと言って許されるものではありません。仮に作品中に描かれるキャラクターの具体的姿態が原作中に一切登場していないとしても、その事情は変わりません。
「ハイスコアガール」では、ゲームキャラクターが単に作中のゲーム画面に描かれているだけでなく、ストーリーの要素として描かれています。単純な引用とは言い難いでしょう。また、大手出版社の商業作品として無許可使用は問題です。良い作品だけに、穏当な決着が望まれるところです。
(小澤 信彦/弁理士)
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