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「食べログ」の情報削除認めず、判決を読み解く

JIJICO / 2014年9月14日 15時0分

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「食べログ」の情報削除認めず、判決を読み解く

札幌地裁、食べログの情報削除請求を棄却

口コミサイト「食べログ」に「客を40分待たせている」などと虚偽の内容を投稿されたとして、札幌の飲食店経営者がサイト運営会社に対し、情報削除等を求めていた訴訟において、今月4日、札幌地裁は請求棄却の判決を下しました。

インターネット上の投稿内容が他人の権利を侵害する態様としては、名誉毀損、プライバシー侵害などが考えられますが、被害者が法人等の事業者である場合は、特に名誉毀損(その経済的側面である信用毀損)が問題となります。

名誉とは、人ないし団体が社会から受ける客観的な評価のことで「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合には、その事実が真実か否かに関係なく、原則として名誉毀損となります。しかしながら、この行為が、(1)公共の利害に関する事実に関し、(2)その目的が専ら公益を図ることにあり、(3)その事実が真実であることの証明があるか又は真実であると信じるについて相当の理由がある場合には、違法性がなく、名誉毀損にならないとされています。また、意見表明や論評も一般的には名誉毀損にはなりません。

プロバイダー等に削除を求めることができるのは権利侵害情報

インターネット上の掲示板などに権利侵害情報が掲載された場合、被害者としては、いち早くその情報を削除したいところですが、通常はその発信者が分からないため、サイトを運営・管理しているプロバイダー等に対し、その削除を求めることが考えられます。しかしながら、プロバイダー等には、権利侵害情報か否か、特に名誉毀損が成立するか否かを容易に判断できないことも多く、発信者の表現の自由との兼ね合いもあって、責任の全てをプロバイダー等に負わせることはできません。

そこで、プロバイダー責任制限法が、プロバイダー等の責任が生じる場合を制限しているのですが、被害者がプロバイダー等に削除を求めることができるのは、あくまでも権利侵害情報です。権利侵害と認められない場合には、そもそも削除を求めることができません。

仮に虚偽の内容であれば、飲食店側の削除請求を認める余地も

飲食店は大衆相手の商売ですので、その料理やサービスに関する事実は「公共の利害に関する事実」といえますし、「食べログ」への投稿も飲食店を利用する大衆に情報を提供し、その便宜を図るという意味で「その目的が公益を図る」ものともいえます。当然に、飲食店の評価を上げる情報もあれば、反対に下げる情報もあるでしょう。しかし、評価を下げる情報について、飲食店側からの削除要求を全て認めていたのでは、サイトの存在意味がなくなります。札幌地裁が、飲食店側の削除請求を棄却した理由として、この点を挙げるのも理解できないわけではありません。

ただ、札幌地裁の判決内容を詳細に把握しているわけではありませんが、当該事例において「客を40分待たせる」といった内容が仮に虚偽であったのであれば、飲食店側の削除請求を認める余地があったともいえるでしょう。「食べログ」は、虚偽の事実を掲載することまで認めているとは到底思えないからです。まだ地裁の判断が示されたに過ぎず、今後、裁判が上級審へ移行した場合には、その行方を見守る必要があるといえるでしょう。

(田沢 剛/弁護士)

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