性犯罪の刑罰見直し、くすぶる疑問

JIJICO / 2014年9月19日 10時0分

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性犯罪の刑罰見直し、くすぶる疑問

法務大臣が性犯罪の刑罰の見直しを明言

内閣改造を終えて、新たに就任した松島みどり法務大臣が性犯罪の刑罰の見直しを明言しています。強盗致傷罪では無期又は6年以上の懲役、強盗致死罪であれば死刑もあり得るところ、強姦致傷罪では無期又は5年以上の懲役、強姦致死罪でも死刑はありません。松島大臣の初登庁会見では、この刑罰の不均衡を指摘し、まずは5年以上と6年以上の逆転だけでも早急に着手してほしいとの発言がありました。

確かに、強姦罪と強盗罪では被害者を暴行や脅迫で抵抗できないような状況にして行う点が共通しているにもかかわらず、法定刑は強盗罪の方が重くなります。実は10年前にも強制わいせつ、強姦と強姦致死傷罪の法定刑を引き上げたことがあり、一方で強盗致傷罪の刑の下限を7年から6年に引き下げているのですが、それでもやはり性犯罪の方がまだ法定刑を見れば「軽い」ということになります。

性犯罪は人の尊厳を踏みにじる行為であり、その人の一生を左右するほどの被害を与えます。さらに、ネットが普及している現代において、性犯罪の映像が流出してしまえば、その被害はさらに時間的にも規模的にも取り返しの付かないものになります。そのようなことから考えると、法定刑の引き上げ自体に合理性がないとはいえないように思います。

犯罪の形態の多様化に法律が追いついているとは言いがたい

一方で、法定刑の引き上げだけで事態は解決するのだろうかと考えると不安な点がないわけではありません。性をとりまく犯罪形態は多様化しています。盗撮方法も巧妙になり、一見どこにカメラがあるのかわからないような物に小型カメラが仕込まれ、遠隔操作も可能というものが市場に出回っています。また、携帯電話で強姦の現場を撮影されてしまい、「被害を申告すれば、『ばらまく』と脅され、警察に相談することができなかった」という声も耳にします。

今は誰もが性能の良いカメラを持ち歩き、情報の拡散が簡単にできる時代ですが、残念ながらそのような犯罪の形態の多様化に法律が追いついているとは言いがたいように思います。先日、京都府警が、カメラを仕込んだ盗撮用の靴をインターネットで購入した人を京都府警が戸別訪問し、靴の任意提出を受けていたといいます。これは事実上、盗撮を少しでも防ぎたいという警察の工夫の一つだったのではないでしょうか。

犯罪の抑止力として、刑罰が果たして有効的か

また、犯罪の抑止力として、刑罰が果たして有効的かという問題があります。意外に思うかもしれませんが、性犯罪の加害者が被害者と顔見知りの関係であることは珍しくありません。そして、過去に行われた加害者へのアンケートによれば、「この人なら誰にも言わないだろう」と考えて犯罪に至ったという意見が「挑発的な服装をしていたから」というよりも大きく上回ったのです。

性犯罪は、被害者の告訴があって初めて警察の手が及ぶものが多いのですが、そこを逆手にとって加害者は泣き寝入りする相手を選んでいるというわけです。このような人々が、法定刑を引き上げたことで思いとどまるのだろうかという疑問は残ります。性犯罪を防止するための方策については、より視野を広げて取り組む必要があると考えるところです。

(白木 麗弥/弁護士)

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