「消滅時効の援用」による債権の行方
JIJICO / 2014年9月28日 10時0分
「消滅時効の援用」による債権の行方
債権は一般に10年で時効によって消滅する
時の経過によって権利の消滅をもたらす制度を「消滅時効」といいます。そもそも、こうした時効制度の存在理由としては、「永年事実状態が継続すれば、社会はそれを正当なものと信頼し、その上に法律関係を積み重ねることにもなり、これを後日覆すことは法的安定性を害することになる」「時の経過により真実確認のための証拠が散逸してしまうことになる」「永年権利を行使せず、いわば権利の上に眠るような者は保護に値しない」などの説明がなされます。
債権の場合、一般に10年で時効によって消滅すると定められています(民法第167条1項)。また、商行為によって生じた債権は、5年で時効にかかると定められています(商法第522条)。
消滅時効期間の進行を止める「時効の中断」
債権の消滅時効期間は、権利行使ができる時から進行します(民法第166条1項)。つまり、債権の弁済期か、約定があれば期限の利益の喪失時に消滅時効は進行を開始します。債権を時効にかけないため、消滅時効期間の進行を止めることを「時効の中断」といいます。「中断」の持つ意味は、それまで進行してきた期間をゼロにする、すなわちスタートに戻るということであり、さらに、時効期間は中断事由の止んだ時から再び進行を開始します。
中断事由としては、「差押え・仮差押え・仮処分」「承認」「請求」があります(民法第147条)。「請求」には、裁判上の請求と裁判外の請求があり、裁判外の請求は6か月以内に裁判上に請求をしない限り中断しなかったことになります。これは、1度しか認められません。すなわち、裁判外の請求は消滅時効期間を最大で6か月延長できるという効果を持つにすぎないわけです。
債務者が援用してはじめて債権者の請求権がなくなる
さて、こうした消滅時効の制度ですが、債務者が援用してはじめて債権者は請求できなくなります(民法第145条)。そして、債務者が時効を援用するかどうかは債務者の自由です。債権者としては、時効期間経過後に債務者の支払いがあれば、これを受け取って何の問題もありません。
加えて、一部の支払いさえあれば債務全部につき「承認」したものとみなされます。これにより、時効期間経過後でも債務者が債務の一部でも支払えば債権全ては消滅しないというのが判例の結論です。
そこで、債権者としては、万一、商品の売掛債権を時効にかけた時、例えば1000円だけでも支払いを受ければ、その領収証(債権全額を特定しその一部であることを明記する)を相手方に渡し、領収書の写しに「間違いなく1000円を支払った」と相手方に記載させることにより、これをもって債務の「承認」、つまり時効中断の証拠とすることができます。
(名畑 淳/弁護士)
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