神戸女児遺棄事件で地域に衝撃、子どもの心を守るには
JIJICO / 2014年9月29日 10時0分
神戸女児遺棄事件で地域に衝撃、子どもの心を守るには
まず、子どもたちの心身状態と行動について観察と確認をする
神戸で起きた女児殺害遺棄事件は、地域の子どもたちの心に大きな衝撃を与えています。被害女児の通っていた小学校の子どもたちにPTSD(心的外傷後ストレス障害)が出ているとの報道もされているようです。このような犯罪に遭遇した子どもたちの心を守るために、どういう対応が必要なのでしょうか?
まず一般的な対応として、次のようなことが挙げられます。
(1)子どもたちの心身状態と行動について観察と確認をすること。この事件は全国的なニュースとなり、さらに最悪の結果になったわけですから、子どもたちが多大な心理的ショックを受けるのは当然のことです。そういう「異常な事態に対する正常な反応」として「身体症状(めまいや頭痛・腹痛等)」「心理的症状(不安や恐怖、自分は何もしてあげられなかったという罪悪感や無力感等)」「退行現象(怒りやわがまま、幼児語の使用や極端な甘えなどの赤ちゃん返り)」が起きることが予想され、そういう場合は周囲の大人がしっかりと安定した態度で受け止めてあげましょう。
(2)その際、一人一人の子どもについて過去に身近な人の死や犯罪被害のような辛い体験がなかったかどうか確認し、もし、ある場合はより慎重な対応をしてあげてください。
(3)また、中には、逆に一時的に表面的に明るくなったり、大人しく聞き分けの良い態度を見せる子どももいます。そういう子どもはつい見逃しがちですが、内面ではより深刻な不安を抱えている場合もあるので注意してください。
(4)さらに場合によっては、事件後すぐには症状が発現せず、半年から1年後に発現することもあるため、長期の見守り体制も必要でしょう。
「根掘り葉掘り聞き出す」のではなく「せかさず丁寧に」
そして、より具体的な対応方法として、以下のことが挙げられます。
(1)まずは、じっくりと話を聞いてあげることが大切です。しかし、中には自分の気持ちを適切な言葉で表現できない子どももいます。そういう場合は、静かなところで、先に挙げたような症状をこちらから積極的・具体的に「○○のようなことはないの?」と聞いて、最後に「元気を出そう」的な励ましではなく、「そういう風に思っているのだね」「大変だったね。よく話してくれたね」と肯定的に言ってあげるのが良いでしょう。また、言葉にしたくないこともあるので、「どうして?」「なぜ?」という言葉は慎重に使い、「根掘り葉掘り聞き出す」のではなく「せかさず丁寧に」耳を傾けてあげてください。
(2)絵や作文等で表現してもらう方法もありますが、強制せず、あくまでも自由な雰囲気の中で行ってください。そして、その表現の中に大人として受け入れがたいような直接的な表現(犯行の状況や死に対する恐怖や不安の直接的な表現等)があったとしても、否定したり、さえぎったりせず、しっかりと受け止めましょう。
子どもの気持ちに共感して「みんな同じ気持ち」と話してあげる
(3)その上でその背後にある気持ちに共感して、「その気持ちはあなただけの気持ちではなく、多くの人が経験することだよ」と話して安心させてください。「自分だけが特別でおかしいのではないのだ、みんな同じ気持ちなのだ」と知ることで、ずいぶん安心感は取り戻せるはずです。
(4)それでも身近な人から見て「おや?これは普段の子どもの様子と著しく違うぞ」という極端な場合や、その状態が長く続く場合は、ためらわずスクールカウンセラーや医療機関へ相談をしてください。
テレビ等では度重なる報道がなされ、見慣れた街角に見慣れない警官やパトカー、報道関係者があふれています。それだけで「何かものすごく大変なことが起きている」という非日常の雰囲気が充満していることでしょう。できるだけ早く地域・学校・家庭において、これまで同様の普段の日常生活・学習活動に戻し、子どもたちに安心感を取り戻させることも重要なことだと思います。
(岸井 謙児/臨床心理士・スクールカウンセラー)
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