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終末期医療を考える。胃ろうの是非

JIJICO / 2014年10月3日 10時0分

終末期医療を考える。胃ろうの是非

終末期医療を考える。胃ろうの是非

胃ろうが終末期医療の代名詞であるかのような誤解も

以前、ある患者から「胃ろうを作ってまで長生きしたくない」と相談を受けたことがあります。胃ろうとは、腹壁を切開して胃内に管を通し、食物や水分や医薬品を流入させ投与するための処置のことです。その人は高齢ではありましたが、食道に障がいがある以外には大きな病気はなく、胃ろうから栄養が取れれば長生きできると思われたため、そのように説明をしました。

その後、5年以上経った今もなお、家族の介護や訪問看護、そして、胃ろうのお陰で、その人は平穏に過ごされています。このように、胃ろうによって救われる患者が数多くおられるのも事実です。

最近の医療関連の報道や書籍で、終末期における胃ろうの是非が取り上げられることが多くなってきました。そして胃ろうが、あたかも終末期医療の代名詞であるかのような誤解が一部で生じています。確かに、ほとんど意識のない重度の脳卒中や認知症の患者に対し、食べられなくなったからといって胃ろうを造設することに疑問を持たれる人もいることでしょう。

胃ろうの是非は個々のケースで十分に話し合って決めるべき

終末期医療のことを「End of Life Care」と英語で呼ぶそうですが、それは単に高齢、認知症、あるいは不治の病であるというだけで対象となるわけではありません。日本老年医学会によると、「終末期」とは、「病状が不可逆的かつ進行性で、その時代に可能な限りの治療によっても病状の好転や進行の阻止が期待できなくなり、近い将来の死が不可避となった状態」と定義されます。人は誰しも年老い、いつかは死を迎えますが、その時期を正確に予測することは、どんなに名医であっても不可能です。

人生の最終段階において、その人が自分の意思でどのように生きるかを考える時、その過程で胃ろうによる栄養供給が必要と判断されることもあるでしょう。あるいは逆に人工的な栄養供給を拒否することもあり得ます。このように終末期の胃ろうの是非は、個々のケースで患者とその家族、そして主治医とが十分に話し合って決めるべきものです。また、突然の事故や病気によって意思表示ができない時に備え、事前指示書の作成を勧める動きも始まっています。

(古家 敬三/医学博士)

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