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芸能人の家族を無断撮影、法的リスクは

JIJICO / 2014年10月12日 12時0分

写真

芸能人の家族を無断撮影、法的リスクは

芸能人を無断で撮影し、SNSに投稿する行為が横行

昨今、ほとんどの人が携帯電話を所持するようになり、内蔵されているカメラでいつでも手軽に写真撮影ができるようになりました。それに伴い、芸能人を無断で撮影し、SNSに投稿する行為が横行。撮られた芸能人から怒りの声が上がっています。そのようなニュースに対して、「人前に出るのが仕事の芸能人なのだから撮られても文句は言えない」といった意見もあるようです。

しかし最高裁は、「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する」と明確に指摘しています。「みだりに」とは、「正当な理由もなく」と読み替えるとわかりやすいでしょう。要するに、人は誰もが正当な理由なく、自分の姿を撮影されないという権利を持っているということです。芸能人である以上、一般人と比べると撮影されることを許容せざるを得ない場面が多いと思いますが、どんな場合でも許されるということにはならないといえます。

芸能人の家族を無断で撮影する行為は違法と評価される。しかし…

それでは、芸能人の家族を無断撮影した場合にはどうなるでしょうか。言うまでもありませんが、芸能人を家族に持つとはいえ、本人はあくまでも一般人です。顔も知らない他人から無断で写真撮影をされることを許容しなければならないケースは相当限られてきます。最高裁は、「被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうか」という基準で無断撮影が違法かどうかについて判断すべきとしています。

この基準に照らすと、少なくとも一般人である芸能人の家族のプライベートな場面を無断で撮影する行為は、ほとんどの場合、違法と評価されるでしょう。その場合、最高裁が認めている人格的利益を損害したことを理由に、民事上の損害賠償請求が認められるということになります。

しかし、現実問題として裁判沙汰に発展するケースは稀だといえます。裁判をするためには撮影者を特定する必要がありますが、見ず知らずの他人の場合、それがどこの誰か(具体的には氏名、住所等)わからないことが多いからです。また、ただ撮影しただけの場合、裁判をしても裁判所が損害賠償金額として認める金額はせいぜい数千円程度となると見込まれるため、裁判を起こされるリスクはそう高くないといえるからです。

無断撮影は、国のモラルが問われる由々しき問題

それでは、無断撮影により刑事罰を受ける可能性はあるのでしょうか。現状、無断撮影一般を処罰する刑事法令は存在しません。無断撮影行為が刑事罰を受ける可能性があるという論評では、軽犯罪法や各都道府県が制定する、いわゆる迷惑防止条例に違反することを指摘するものがあります。しかし、通常の無断撮影がそういった刑事法令違反に該当する可能性はほとんどないといえます。前者は「不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとった者」、後者は「公共の場所などでの粗暴行為や痴漢等の卑わいな言動」について処罰する規定となっているからです。こういった態様でない限り、刑事処罰を受けることはありません。

このように、芸能人の家族を無断撮影したとしても、民事上裁判を起こされる可能性は決して高くはありませんし、刑事罰を受けることも通常ありません。しかし、だからといって無断撮影は問題ないと考えるべきではありません。こういった問題は国のモラルが問われます。法律よりも大切なことは世の中にたくさんあると思います。無断撮影が社会問題となり、法律を作らなければ取り締まれないようなことになってしまえば、「悲しい」の一言に尽きます。

(河野 晃/弁護士)

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