派遣法改正案は働く人にとって悪法か?
JIJICO / 2015年5月14日 10時0分
派遣法改正案は働く人にとって悪法か?
「派遣労働者の生涯固定化」につながると大きな反発も
労働者派遣法改正案は12日の衆院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、審議入りしました。改正案で大きな注目を浴びているのは、派遣期間について上限を設けない「無期の派遣を設ける規程」です。
この規定は、従来の限定された専門26業種にだけ認められていた無期の派遣について、派遣会社と無期の雇用契約を結んだ場合、仕事内容にかかわらず、いつまでも同じ派遣先で勤務することができるようになり、野党などから「派遣労働者の生涯固定化」となるものであるとして大きな反発がなされております。
派遣労働者としての勤務を希望している人にはメリットが生じる
では、今回の派遣法改正案が悪法なのかと言えば、必ずしもそうとは言えない部分があります。そもそも現行制度の特徴は、派遣は臨時的な労働力の調整と位置づけており、企業が継続的な派遣社員の利用ができないよう3年の期限を設け、その後、正社員の転換を促すものとなっている点にあります。
しかし、現実として、企業は業務の種類を変える、もしくは派遣会社を変えるなどにより、派遣労働者を正社員へ転換することなく派遣労働者を継続して利用しているケースが多いでしょう。そのため、逆に3年間で契約が切られてしまうことにより、派遣労働者の雇用の継続が不安定になるという弊害が生じております。あえて派遣労働者としての勤務を希望している人については、今回の改正により、継続的な勤務が確保されるメリットが生じます。
派遣労働者の待遇改善への施策も盛り込まれている
今回の改正では、派遣期間の定めの他に、特定派遣の禁止が盛り込まれています。派遣事業者はすべて許可制となり、労働・社会保険加入や、派遣労働者へのキャリアアップ支援も義務化され、派遣労働者の待遇改善への施策が盛り込まれております。
また、3年という期間制限は、企業でなく人に対してかかることとなり、派遣会社との無期雇用契約でなく、3年の期間を定めた契約を結び、3年後に(1)派遣先に直接雇用(2)新たな派遣先で働くという選択を個人単位で検討することができるようになります。以上のことから、今回の改正案が完全に悪法ということはできないと思います。
派遣社員をどのような位置づけとするのか、政府の方針に注目
では、今回の改正案に対し、不安を感じる人が多いのはなぜでしょうか?これは、派遣という雇用形態が、臨時的・一時的な労働力の調整弁ではなく、一つの継続的な雇用形態として成立し、恒常的に続くものとして存在することで、現在、正社員が行っている業務の代替化が進み、正社員の減少、契約社員の増加につながるのではないかと感じているからだと思われます。
これは、今回の改正に限らず派遣制度そのものの問題であり、今後、派遣社員をどのような位置づけとするのか、政府の方針を確認する他ないでしょう。
(大東 恵子/社会保険労務士)
この記事に関連するニュース
-
定年退職後も働きたいです。再雇用で「嘱託社員」として働く場合、「契約社員」とはどう違うのか具体的に知りたいです。
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月8日 8時30分
-
契約社員で「基本給20万円」だけど、「交通費」や「食事手当」の支給は“契約条件”によるの? 賞与や退職金についても解説
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月30日 5時20分
-
あと5年で定年を迎えます「再雇用は給与2割減」と言われたのですが、そういうものでしょうか…?
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月28日 23時30分
-
「アルバイト」と「パート」の違いは年齢?よく分からないのですが、どこが違うのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月26日 4時20分
-
「定年したらゆっくりしたい」と言う父と「健康や生活のためにも会社で働いてもらいたい」と言う母。娘としてどうするべき?
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月22日 10時50分
ランキング
-
1バブル期に各自治体へ1億円…「ふるさと創生」とは一体何だったのか 小学校に作った“巨大電飾看板”のその後
東海テレビ / 2024年7月19日 6時34分
-
2兵庫県知事「今、記憶がない」“特産品の要求音声”直撃に… パワハラ告発男性が残す
日テレNEWS NNN / 2024年7月18日 21時22分
-
3米軍関係者の性的暴行、他県でも非公表 「住民の被害を隠蔽」
毎日新聞 / 2024年7月18日 21時9分
-
4百条委提出の音声データにイチゴや塩の受け取りも示唆する発言 兵庫知事、相次ぎ受領か
産経ニュース / 2024年7月18日 21時46分
-
5手榴弾投げる訓練中の事故、死亡した隊員は「飛散破片に接触の危険性認識せず」…指揮官の適切な指導もなかったと結論
読売新聞 / 2024年7月19日 7時10分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください