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職員給与引き上げ勧告、河村市長の拒否は妥当?

JIJICO / 2014年11月19日 15時0分

職員給与引き上げ勧告、河村市長の拒否は妥当?

職員給与引き上げ勧告、河村市長の拒否は妥当?

河村市長は、庶民の生活実態を反映していないと主張

河村たかし名古屋市長が、市職員の給与を引き上げるべきとする市人事委員会の勧告を拒否し、市職員労働組合が勧告実施を求める抗議集会を開くなど混乱する事態が発生しています。河村市長は、勧告の基礎となる「民間給与実態調査」の既存ルールを問題視し、それにより導き出された勧告は庶民の生活実態を反映していないと主張しています。

この問題については、地方公務員の給与制度や憲法が保障する労働基本権の視点から捉えていく必要があるでしょう。

地方公務員の給与は、「均衡」と「情勢適応」の原則に従う

地方公務員の給与は、一定の水準を保てるよう地方公務員法に保障のための規定が設けられています。国や他の地方自治体の職員の給与、民間企業の労働者の給与などを考慮して定めることとされ、ほかとの「均衡」を原則とすることを求められています。さらに、その給与が社会一般の情勢に適応するよう自治体は随時、適当な措置を講じることとされ、「情勢適応」を原則とすることを求めているのです。

このような「均衡」と「情勢適応」の原則に従い、地方公務員の給与を適正水準に保つための調査・勧告を行うのが人事委員会です。人事委員会は各都道府県、政令指定市などに置かれ、民間労働者の給与を実態調査した上で自治体職員の給与との比較を行い、首長に対して給与引き上げ・引き下げを勧告しています。通常であれば、この勧告を受けて給与改定の条例案が議会に提出され、成立することにより給与が改定される手順ですが、冒頭に述べた河村市長がこの勧告を拒んでいることが、今回、名古屋市で起きている事態です。

人事委員会による給与勧告は、労働基本権の制約に対する代償

人事委員会による給与勧告については、憲法が保障する労働基本権と関連付けて捉える必要があります。憲法では、労働者が労働組合を組織する権利である「団結権」、労働組合が使用者と交渉する権利である「団体交渉権」、ストライキ等を行う権利である「争議権」という三つの基本的権利を保障しています。

ただし、職務の公共性から公務員については争議権が認められておらず、労働基本権が制限されています。地方公務員の給与決定の過程である人事委員会による給与勧告は、このような労働基本権の制約に対する代償という意味合いを持つ措置でもあるのです。

民間給与実態調査に問題があるのであれば、別に議論されるべき

今回の名古屋市人事委員会の給与勧告が、法とルールに則って行われたものである以上、市長がそれを拒否することはいささか無理があるかもしれません。

勧告の基礎となる民間給与実態調査は、現在は従業員50人以上の事業所を対象としています。この調査対象に問題があり、民間労働者の給与実態を反映していない調査結果が導き出されているのであれば、それはまた別の問題として今後議論されることが望ましいでしょう。

(佐々木 淳行/社会保険労務士)

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