マクドナルド復活のカギを握るキーワード
JIJICO / 2014年11月20日 10時0分
マクドナルド復活のカギを握るキーワード
仕入先の不祥事をきっかけに11年ぶりに赤字に転落
7月、使用期限切れの鶏肉を供給していたことが発覚した上海福喜食品有限公司(中国)は、米国に本社を置き、全世界40カ国以上に食肉を供給する多国籍企業OSIグループの子会社です。
日本マクドナルドはチキンマックナゲットの2割を同社から仕入れていました。7月25日、日本マクドナルドは、中国製チキン商品の販売を中止し、すべてタイ産のチキンに切り替えると発表。これを契機に、商品の品質及び品質管理を徹底することを表明しましたが、2014年12月通期の業績予想は、上海福喜問題の影響が色濃く出ました。
売上高は前期比15.1%減の2210億円、当期純損益は原材料の廃棄費用や減損損失を計上し170億円の赤字と、11年ぶりに赤字に転落。今後は新メニュー導入や、350円~450円と値ごろ感のある「昼マック」投入、既存店の改装・改築を進め、地域ごとの最適な体制を整えるとしています。
マクドナルドを栄光へ導いた二人の創業者の精神
「成功はゴミ箱の中に」の著者として有名なマクドナルドの創業者レイ・クロック(1902-1984)。紙コップなどのセールスマンを経て1954年、ミルクシェーキミキサーのセールスマンとして、ロサンゼルス郊外のサンバーナーディーノでハンバーガーショップを経営していたマクドナルド兄弟と出会います。当時としては画期的な迅速なサービス、工場式ハンバーガー製造法、セルフサービス方式に関心を持ち、フランチャイズ化を勧めました。積極展開に消極的であったマクドナルド兄弟に代わり、フランチャイズ化の権利を付与され、1961年、全世界へ多店舗展開を目論むクロックに270万ドルで経営権を売却したことからマクドナルドの快進撃が始まりました。「競争相手のすべてを知りたければゴミ箱の中を調べればいい。知りたいものは全部転がっている」はあまりにも有名な言葉です。
もう一人の創業者は、日本マクドナルドを創業した藤田田氏(1926‐2004)。東京大学在学中、通訳のアルバイトで知り合ったユダヤ人米兵の考え方に影響を受け、1950年、輸入雑貨販売店「藤田商店」を設立。宝石や雑貨を輸入販売し大きな利益を得、1971年、日本マクドナルドを設立しました。1972年の著書「ユダヤの商法世界経済を動かす」などで、たった二つの儲かる商売として「女と口を狙え」と説いています。前者は女性と女性に貢物をする男性相手の商売で、後者は食べ物。どちらも付加価値を高めれば高い値段をつけることができるとしてファミリー向けターゲットを拡大し、日本マクドナルドは12年で外食産業売上日本一を達成しました。
一点の曇りもないクルーのにこやかなスマイルがカギを握る
日本マクドナルドの目指す品質は、「優れた人材育成により信頼を獲得し社会貢献する」です。顧客が求める便益は、安全なハンバーガーを誰もが手軽に食べられる明るく清潔な空間でしょう。くしくも今回の教訓は、過度なコストダウンの代償が、品質劣化を招いたサプライチェーンの危うさを露呈しました。
マクドナルド復活のシナリオは、創業者の教えを踏襲した安全な食材、明るく清潔な店内、そして一点の曇りもない店員(クルー)のにこやかなスマイルがカギを握っているでしょう。
クロックは語っています。「マクドナルドは人間によるサービスが売り物で、オーダーを取るカウンターの店員の笑顔が我々の大切なイメージなのだ」と。
(村上 義文/認定事業再生士)
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