派遣法改正は技術者の就業不安を招く
JIJICO / 2014年11月18日 12時0分
派遣法改正は技術者の就業不安を招く
現在の派遣法では、派遣期間の上限は3年
今期の国会で重要審議事項に挙げられていた派遣法の改正。またも期限切れにもつれ込み、6月に次いで今回も廃案となりそうです。
今回の派遣法案改正のポイントは、派遣期間。現在の派遣法では、派遣期間の上限を3年として、特定26業種以外での同一の職種での派遣が認められていません。特定26業種とは、情報処理システム開発・機械設計・機器操作、通訳・翻訳・速記、秘書などで、派遣期間の上限を定めることなく派遣が継続できます。
業種の解釈を巡って混乱も。一律に3年を上限とした改正案が浮上
これらの特定26業種は、派遣法が施行された1986年に派遣が認可された業種です。派遣業者は、これら労働者を派遣会社が正社員として常用雇用することで派遣就労が認可されました。1999年の派遣法改定では、派遣可能な業種が拡大され、また、派遣期間に応じて派遣会社が雇用期間を定める、いわゆる一般派遣が認められたことで、オフィスや製造現場でも「派遣」就労の形態が一気に広がりました。
しかし、業種の解釈を巡って混乱が生じるように。例えばOA機器操作は「特定業種」に分類されていますが、派遣法制定の20年を経て、特殊な業種ではなくなっています。そのために特定業種の縛りを外し、一律に3年を上限とした改正案が浮上したのです。
期間の上限撤廃や特定派遣の廃止は技術者の就業を脅かす
これまで、就業期間の制限なく同一職場での勤務ができたエンジニアは、3年を上限として継続勤務ができなくなります。このことは、派遣就業という形態であっても長期安定して就業してきた技術者の就業が脅かされることにつながります。
また、ITエンジニアの就労する職場環境は、一次請けから二次、三次、四次請けとプロジェクトに応じて複数の業者間でエンジニアに招集を掛けて仕事をすることも多く、中小零細のITソフト開発企業では受託と派遣での就業が混在しているケースもあります。小規模の業者は一般派遣の事業認可を受ける企業規模を持たず、これまでの特定派遣の事業者が一般派遣の認可に一本化された場合、廃業や転業に追い込まれる中小零細派遣企業も出ることが予想され、そこで働く技術者の雇用にも影響が出ることが懸念されます。
技術者が、長期安定して仕事に集中して働ける環境整備は自身の技術向上につながり、ひいては、日本のものづくりの水準を押し上げるものとなります。正社員や派遣社員に関わらず同一労働同一賃金の原則を貫くことは、技術者間の健全な競争意識を醸成し技術向上に向けることができると考えますが、今回の派遣法改正案では、この点の議論がなされたのか、見送りのなった今更に今後の議論に注目したいと思います。
(斉藤 博志/人材派遣会社 代表)
この記事に関連するニュース
-
正社員不足を感じている企業は51.7%、高止まりが続く 非正社員の人手不足、「103万の壁」見直しで解消なるか
PR TIMES / 2024年11月15日 13時40分
-
フリーランス新法が「下請法」と大きく異なる点は? 分かりやすく解説
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月15日 9時30分
-
未経験の業界へ転職したいので教育訓練を受講しようかと思います。2024年10月より教育訓練給付金が拡充されたと聞いたのですが、どのように変わったのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月14日 9時0分
-
リアリゼイション、最大1600万円!キャリアアップ助成金(正社員化コース)の相談受付開始
PR TIMES / 2024年10月29日 14時15分
-
大阪商工会議所が主催する「特定技能制度」活用促進セミナーにアイデムグローバルが登壇
PR TIMES / 2024年10月28日 15時15分
ランキング
-
1三菱UFJ銀行の貸金庫から十数億円抜き取り、管理職だった行員を懲戒解雇…60人分の資産から
読売新聞 / 2024年11月22日 21時35分
-
2「築浅のマイホームの床が突然抜け落ちた」間違った断熱で壁内と床下をボロボロに腐らせた驚きの正体
プレジデントオンライン / 2024年11月22日 17時15分
-
3【独自】船井電機前社長『不正を働いたことはない』 “破産の申し立て”は報道で知る「本当に驚いた。なんでこんなことに…」
MBSニュース / 2024年11月22日 18時20分
-
4物価高に対応、能登復興支援=39兆円規模、「103万円」見直しも―石破首相「高付加価値を創出」・経済対策決定
時事通信 / 2024年11月22日 19時47分
-
5相鉄かしわ台駅、地元民は知っている「2つの顔」 東口はホームから300m以上ある通路の先に駅舎
東洋経済オンライン / 2024年11月22日 6時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください