子どもへの抗生物質処方に求められる判断
JIJICO / 2015年6月13日 14時0分
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子どもへの抗生物質処方に求められる判断
長寿には抗生物質の存在が大きく貢献している
子どもに処方される薬について悩む親は多く、「風邪をひいたが、抗生物質を飲んだ方が良いのか」との質問をよく受けます。
そもそも抗生物質とは、バイ菌と呼ばれている細菌感染に有効な薬です。肺炎のように細菌感染が重症になれば、命に関わる場合もあります。しかし、抗生物質が発見されてきてから、多くの人の命が救われてきました。世界的に昔と比較してこれだけ長寿になったのも、抗生物質の存在が大きく貢献していると言えます。
抗生物質の使用にはメリットだけでなく懸念点も
しかし、抗生物質を使うことはメリットばかりではありません。大きく分けて、三つの懸念点があります。一つは、すべての薬で起こり得るアレルギー反応です。特に小さな子どもは、体調の悪い時に症状を明言しない場合もあり、アレルギー反応の発見が遅れる可能性もあります。
二つ目は、体内の常在菌が減少してしまうことです。常在菌は悪い病気の細菌から体を守ってくれますが、抗生剤を繰り返し使用してしまうと、この常在菌たちが死滅し、感染症にかかりやすく、また、治りにくくなります。さらに、三つ目は耐性菌が増えてしまうことです。耐性菌とは抗生剤の効かない細菌のことで、これらは抗生剤を使えば使うほど増加し、治療が難しくなるケースもあります。
風邪などの原因を明確に区別することは難しい
風邪や発熱の原因はさまざまですが、そのほとんどはウイルスによるもので、それらに抗生剤は効きません。例えば、インフルエンザ、RSウイルス、アデノウイルス、ロタウイルス、みずぼうそう、おたふくかぜ、はしかなどは、すべてウイルス感染症であり、抗生剤は必要ありません。
では、なぜこれらの病気に対して抗生物質を処方する医師がいるのでしょう。それは、ウイルス感染症にかかると、白血球という細菌から体を守る兵隊が減り、細菌感染に同時にかかってしまう場合があるからです。また、風邪症状の患者の鼻や喉などからウイルスや菌を検出する簡易検査キットを用いても、その原因がウイルスか細菌かを明確に区別することは実際には難しいのです。経過を見ながら細菌感染症が強く疑われた場合には、抗生物質をしっかりと使います。
医師はガイドラインの指針に基づいた治療を行っている
「小児呼吸器感染症診療ガイドライン」(日本小児呼吸器疾患学会・日本小児感染症学会発行)では、抗生物質の乱用を抑制する指針が示されおり、医師はそれに基づいて治療を行っています。重要なことは、抗生物質が必要な状態かどうかということです。抗生物質が必要な状態で使用せずに様子を見るのは100年前の治療と同じで、命に関わる可能性もあります。
一方、不適切に抗生物質を飲むことも問題です。小さな子どもを持つ保護者側も「心配だからと抗生剤」を希望せず、病状に応じて再受診することが不必要な抗生剤の使用を減らし、重い病気を見逃さないことにつながります。
また、抗生物質はある程度、血液中の薬の濃度が上がらなければ効かないため、少量を使うという治療は原則的にはありません。さらに、抗生物質を飲み始めた場合、表面的には症状が回復したように見えるからといって、自己判断で服用を中断するのも危険です。症状が再発したり、菌の増殖につながったりする恐れがあるため、医師の指示通り内服し、自己判断による行動は控えるようにしましょう。
(大西 勝也/内科医)
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