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ある日、ミツバチが消える…「真犯人」の正体

JIJICO / 2014年11月24日 12時0分

ある日、ミツバチが消える…「真犯人」の正体

ある日、ミツバチが消える…「真犯人」の正体

2030年代にはミツバチは全滅?「蜂群崩壊症候群」の脅威

「ある日、ミツバチの巣箱を見てみると、こつ然と蜂たちがいなくなっていた」。まるでミステリーのような現象が多発しています。アメリカで2006年に初めて報告があって以来、世界中で続々と続く「蜂群崩壊症候群(CCD)」です。「すでに北半球のミツバチの1/4が消えた」ともいわれています。このペースでミツバチが減り続けると、2030年代にはミツバチは全滅することになります。これは大変な事態です。

ミツバチは蜂蜜を生産しますが、それより遥かに重要な仕事を担っています。それは農産物の「受粉」。実に農産物の7割が、ミツバチの「受粉」によって「結実」しているのです。ミツバチが花から花へ花粉を運んでくれるからこそ、私たち人間は豊富な農産物の恩恵を得られている、といっても過言ではありません。

「真犯人」は「ニコチノイド系の農薬」か?

蜂群崩壊症候群については、世界中の科学者によって、さまざまな原因が検討されました。例えば、ミツバチにたかる寄生虫、病原菌、原虫、ウイルス、農薬等の化学物質、花の減少や農作物の単一栽培による栄養失調、果ては携帯電話の電磁波説まで、ありとあらゆる可能性です。そして最近になってやっと「真犯人」らしきものの影が見え始めました。それは「ニコチノイド系の農薬」です。

「ニコチノイド系」は1990年代から使用が始まった新型農薬です。タバコのニコチンに構造が似ていて昆虫の神経系に作用します。浸透性、持続性、人体に対する安全性など、今までの「有機リン酸系」の農薬とは段違いで「夢の農薬」として瞬く間に世界中に広まりました。実は、ミツバチの顕著な減少は、この時期とまさに重なっているのです。

致死量よりはるかに微量でも、ミツバチは巣に帰れなくなる

この農薬は、強い浸透力で植物体に入り、長期にわたり植物に残留します。つまり、植物体自体が「農薬」になるようなものです。もちろん、花粉や蜜にも残留することになります。

先ごろ、日本の市販ハチミツから「ネオニコチノイド」が検出されました。その濃度は、人間には影響はないものの、ミツバチの致死量の数分の1にあたる量でした。実は最近の実験で、神経系に作用するニコチノイド系の農薬は、極めて微量でも昆虫の行動に絶大な影響を及ぼすことがわかってきました。致死量よりはるかに微量でも、ミツバチは巣に帰れなくなることが各国の実験で再現されたのです。

EUが農薬の規制に踏み切った中、日本はさらなる規制緩和へ?

EUはこうした実験結果を鑑み、このニコチノイド系の農薬の規制に踏み切りました。こうした「まだ証明はされていないが、事実だった時の重大性を考え一定の規制をする」ことを「予防原則」というが、今回の場合、極めて妥当な判断と言えるでしょう。翻って日本は、もともとこのニコチノイドの残留規制が欧米の10倍から100倍甘かった上、さらに業界の希望に沿って規制緩和しようとしています。いったい何を考えているのか見当もつきません。

さらに、ネオニコチノイド系農薬の使用拡大時期、ミツバチ以外の自然界の「花粉媒介昆虫」もどんどん減少しています。地球上の植物全体の4分の3は、昆虫の花粉媒介で命脈を保っています。植物が4分の1になった世界を想像できる者がいるでしょうか。

農薬による子どもの健康被害の警告も。状況は待ったなし

また、最新のオランダからの報告では、ネオニコチノイド系農薬を使った土地において、明らかな野鳥の減少報告もされていいます。昆虫減少による食糧不足が原因ではないか、という結論でしたが、研究者の中には、神経毒であるニコチノイドの鳥類への直接的影響もあるのではないか、との意見もあります。

では、人間への直接的影響はないのでしょうか?2012年、米国小児学会は「子どもの農薬曝露を減らすよう勧告」の声明を出しました。発達障害や脳腫瘍など、農薬による子どもの健康被害を警告したものです。

すべての局面で、状況は待ったなしの様相を呈してきています。

(北川 実/理数専科塾塾長)

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