ノーベル賞の裏にある「確執」中村教授と日亜の特許訴訟の見方
JIJICO / 2014年12月13日 10時0分
ノーベル賞の裏にある「確執」中村教授と日亜の特許訴訟の見方
双方の言い分の妥当性が裁判で決着がついているとは言い難い
ノーベル賞授賞式が、ストックホルムのコンサートホールで開かれました。青色発光ダイオード(LED)を開発し、物理学賞に選ばれた赤崎勇・名城大終身教授、天野浩・名古屋大教授、中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授がメダルと証書を受け取り、日本中が歓喜にわいています。
華やかなノーベル賞授賞の話題ですが、一方で、青色LEDを巡っては中村氏と、元勤務先の日亜化学工業(徳島県阿南市)の「確執」が長きにわたり取り沙汰されています。
この問題に関しては「そもそも裁判で決着がついているのではないか」と思われる人もいるでしょう。確かに、東京地裁では中村氏の主張が認められ、日亜化学に対し約200億円の支払いを命じる判決が下されました。しかし、その後の東京高裁では事件は和解となって終結します。和解では日亜化学が中村氏に約6億円(+遅延損害金として2億円)を支払うことになりましたが、当時、中村氏は「和解は敗訴」と言っています。そういう点で、双方の言い分の妥当性について裁判での決着がついているとは言い難いのが実情です。
日亜化学は、中村氏の言う特許発明は使用していないと主張
裁判ではいくつかの争点があったのですが、特許訴訟としてのポイントは、「(1)日亜化学は中村氏の発明を使っているのか」「(2)使っているとして、製品における中村氏の発明の貢献度はどの程度のものか」でした。また、「(3)日亜化学に貢献した発明の真の発明者は誰なのか」も大きな問題だったのです。
(1)について、日亜化学は、中村氏の言う特許発明は使用していないと主張しています。実は、中村氏の言う特許(’404特許と言われます)は、製造方法に関する特許です。一般に、新しい物質や部品の特許は、製品の分析をしてみれば検証できますが、製造方法の特許は検証が難しいものです。
問題となったGaN(窒化ガリウム)の整った結晶をつくる技術も、実はひとつではありません。確かに中村氏がそのひとつの方法を開発したのは事実なのですが、日亜化学は、中村氏の方法は量産段階では使用していない、と主張しています。少なくとも現時点でこれを使っている企業はないようです。
和解は、中村氏が関与した日本での登録特許191件その他を対象
(1)が否定された場合、(2)は必然的にゼロになります。おそらく、東京高裁での認定はこれに近いものだったのではないでしょうか。しかし、それではなぜ、認定額がゼロではなかったのでしょうか。
これが(3)の問題です。これも日亜化学は中村氏ではないとしています。量産化に必要な技術は、中村氏以外の若い研究者の研究成果だというのです。また、そもそもの前提であるGaNによる青色発光技術の基礎部分の多くは、赤崎・天野両教授によるものです。東京高裁での和解は、日亜化学によれば、’404特許だけではなく、日亜化学在籍時代に中村氏が関与した日本での登録特許191件その他を対象とするものだそうです。それがある意味、妥当な着地点だったのでしょう。
結論として言えば、高輝度青色発光ダイオードのブレイクスルーや実用化には、中村氏以外の多くの日本人が関わっているのは間違いありません。中村氏へのノーベル賞に関しては、そうした人たちの姿を重ねてみるのが正しい態度なのかもしれません。
(小澤 信彦/弁理士)
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