「ぼったくり」返金すれば罪は不問?

JIJICO / 2015年1月8日 9時0分

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「ぼったくり」返金すれば罪は不問?

店から不当な高額請求、当該店舗が閉店に追い込まれる

先日、都内の居酒屋を利用した客が、店から不当な高額請求を受けたことを写真付きでツイートしたことをきっかけに、当該店舗が閉店に追い込まれるという出来事がありました。

この店舗の運営会社は、ホームページ上で謝罪した上で、正規料金を超えて店が請求していた部分については返金に応じるとしているようです。以前は、バーや性風俗店など一部の業態に集中していた不当請求事案が、最近はかなり幅広い業態で見られるようになっています。

一口に「ぼったくり」といってもその手口は様々です。客引きから提示された金額と店での金額が異なるケース、あるいは、店に料金表示がなく会計の際に「ビール1杯で数万円、数十万円」という極めて高額の請求をされた場合など。

すべての「ぼったくり」事案が詐欺罪で立件できるわけではない

一般の人がこうした「ぼったくり被害」に遭った場合、まず考えるのは、「話が違う。詐欺ではないか」ということではないでしょうか。しかし、刑法の詐欺罪というのは、なかなか成立や立証が難しい犯罪で、すべての「ぼったくり」事案が簡単に詐欺罪で立件できるわけではありません。

例えば、先ほどの「ビール1杯数万円」というケースでも、店に料金表示がなく、店側がその金額がうちの正規料金でこれを請求したに過ぎないと言い張った場合には、詐欺罪の成立や立証はとても難しくなります。

これは、詐欺罪の成立には、相手を騙して錯誤に陥らせる、簡単にいえば、相手に「真実と異なる間違った認識」を持たせようとすることが必要だからです。ビールの例でいえば、店自体がビールをいくらで売るかは基本的に自由ですので、ビールを数万円で販売すれば、これが「真実」になってしまい(極めて高額ですが)、真実の金額を請求しているだけとなりかねないのです。その他にも、詐欺罪の成立や立証には様々なハードルがあり、これらが「ぼったくり」事案での詐欺罪の立件を難しくしています。

大都市を中心に、「ぼったくり防止条例」を定める都道府県も

他方で、会計の際に、店内で表示された金額や正規料金より高額な請求を意図的に行ったり、本来請求できない金額を請求したりしたような場合には、客に対して、真実(実際)の金額とは異なる金額を支払う必要があるかのように騙していることになるため、詐欺罪が成立する可能性が生じます。

また、大都市を中心に、こうした「ぼったくり」事案の減少を狙って、いわゆる「ぼったくり防止条例」を定める都道府県もあります。東京都もこれに含まれます。こうした条例では、性風俗店や飲食店など一部の業態に限るものの、店に料金表示を義務付けたり、料金について虚偽の説明をすることなどを禁じています。

あとから返金しても、犯罪がなかったことにはならない

では、こうした不当請求の事案で、あとから取りすぎた料金を返金すれば、罪は不問となるのでしょうか。答えは「否」です。「ぼったくり」事案で詐欺が成立する場合、客が騙されて料金を支払ってしまった段階で詐欺罪は完全に成立してしまいますので、その後に返金をしたとしても、犯罪がなかったことにはなりません。せいぜい情状として考慮され処分や刑罰が軽くなったりするにとどまります。

客としては、客引きのうまい話を安易に信じない、店の料金表示をきちんと確認する、明らかな不当請求を受けた場合にはすぐに警察に相談する、などの自己防衛も求められます。また、詐欺などの犯罪が成立しなくても、民事でお金を取り戻せる可能性はあるため、その点も知っておいてください。

(永野 海/弁護士)

ジジコ

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