増え続けるストーカー、規制法の限界
JIJICO / 2015年7月17日 13時0分
増え続けるストーカー、規制法の限界
ストーカー行為を規制するため制定された「ストーカー規制法」
ストーカー規制法は、平成12年に制定され、施行されました。ストーカー行為が処罰の対象となっています。
一般に、処罰するには、どのような行為が処罰されるのか、また、その刑罰はどのようなものかということについて、あらかじめ法律によって明確に定めなければなりません(罪刑法定主義)。
特定の者に対し、恋愛感情や好意の感情を有し、または、それが満たされなかったことに対する怨恨の感情をもって、それらを充足するために、つきまといなどの行為に及んだ末、身体にも危害を加えるに至った事件は、いくつも聞いたことがあると思います。こういった事件がきっかけとなり、強い怨恨の感情により最悪の場合、殺害に発展しかねないというストーカー行為そのものを規制するべく、同法は制定されたのです。
罪刑法定主義から、SNSによるメッセージは現在も規制の対象外
当初、処罰の対象となる行為としては、つきまとい・待ち伏せ・押しかけ、行動を監視していると告げる行為、面会・交際の要求、乱暴な言動、連続した電話・ファクシミリ、汚物などの送付、名誉を傷つける文書送付など、性的羞恥心の侵害行為が定められました。しかし、通信手段としてメールが一般に多用されるようになると、同様の目的をもって、電話やファクシミリではなく、メールを送信する事案が現れ出したのは自然の流れです。
規制の必要性はあるものの、罪刑法定主義から、電話やファクシミリという法律の文言をメールも含むと解釈することは認められず、元の法律では取締ができないという問題が生じました。そこで、メールによる行為も追加することを含む法改正が平成25年に行われました。ただ、メールと規定されているものは、あくまでメールに限られます。最近、普及が著しいソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などによるメッセージは、メールとはいえないため、同様の目的をもってSNSによるメッセージを送ることは、規制の対象にはなっていません。
カウンセリングなどで再犯を予防するための措置も検討すべき
また、店に来た客が仕事のクレームという形で行った場合や、近隣紛争などで類似行為を行った場合といったように、行為をした目的が、法律に規定する恋愛感情に基づくものであるとは判断しづらいというような事案も発生し、いわば法改正と新たな行為は「いたちごっこ」となってしまっています。
このように、法制定や前の改正の時点では予定されていなかった通信手段の発達や、抜け穴的行為が行われることを考えると、およそ法で規制対象を網羅するのには限界があります。
ストーカーを減らす対策として、法律により行為を規制することのみならず、加害者に対する精神面の治療やカウンセリングといった側面から、再犯を予防するための措置を取ることについても検討すべきだとの声が挙がっています。
(柳原 桑子/弁護士)
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