「ノー残業デー」効果的な継続運用の鉄則
JIJICO / 2015年1月30日 17時0分
「ノー残業デー」効果的な継続運用の鉄則
ノー残業デー導入で、不都合が生じるケースも
ここ数年、多くの企業で導入が進んでいる「ノー残業デー」。従業員にとっては、早く帰って家族と過ごしたり、仲間と食事に出かけたりする時間がとれますし、また、企業にとっても残業代を削減できるなど、双方にとってメリットがあるように見えます。
しかしながら、ノー残業デーを導入したことで、さまざまな不都合が生じるケースもあります。
「仕事が残っていても帰らないといけないので、他の日の残業時間が多くなる」「管理職には適用されないため、管理職に負担が集中する」「ノー残業デーとは名ばかりで、結局いつもと同じように残業している」など、ノー残業デーに対して不満を抱えている従業員が少なからず存在します。企業にとっても、ノー残業デーを導入したことで社員のモチベーションが下がったとあれば、本末転倒です。
重要なのは、残業そのものを減らす取り組み
では、どうして、このような問題が生じるのでしょうか。原因は、単に「水曜日は残業禁止」といった制度を導入しただけで、根本的に残業時間を減らす努力や、従業員の意識改革が伴っていないからです。
ノー残業デーを徹底させるために「時間になると強制的に事務所を消灯する」といった取り組みを行っている企業もあります。しかし、会社で終わらすことができなかった仕事を自宅に持ち帰らざるを得ない社員も存在し、新たな問題を生み出します。重要なのは、ノー残業デーを導入することではなく、残業そのものを減らしていくという取り組みです。取引先からの急な注文に対応するためなど、突発的で不可避な残業については仕方がありませんが、ほぼ毎日、数時間も残業しないと仕事が終わらないというのは、必ずどこかに問題があります。
仕事の内容や、割り振りの見直しを徹底的に行い、非生産的で無駄な仕事にかける時間を極力少なくさせ、また、決められた期限内に仕事を終わらせるように社員の意識改革を促す必要があります。また、会社としても、遅くまで残業をする社員より、定時できっちりと仕事を終わらせる社員の評価を高くするなどの取り組みも求められるでしょう。もちろん、単純なマンパワー不足が原因で、どれだけ努力しても、個人の残業時間を減らすことができない場合は、会社が適切に人材を補充してあげるべきです。
「形骸化したノー残業デー」では継続運用は困難
日本有数の総合商社である伊藤忠商事は、このノー残業デーの制度を徹底し、社員の意識改革に成功しています。商社というと「深夜残業が当たり前」といったイメージがありますが、伊藤忠商事では、2014年5月より20時以降の残業を原則禁止しています。
残業を禁止した一方、早朝の時間外手当を増やしたことで、早朝に出社して定時内に仕事を終わらせようとする社員が増え、いわゆる「ダラダラ残業」がなくなり、仕事効率が大幅にアップしたとのことです。また、早く帰宅できることで家族と一緒に団らんしたり、趣味や自己啓発、ジム通いなどにかける時間が取れるようになり、生活面でのメリットも大きいと従業員にも好評なようです。
残業代や光熱費削減のためだけの「形骸化したノー残業デー」では、継続運用は困難です。どうすれば社員の仕事効率を高め残業時間を減らすことができるか、仕事内容に無駄はないか、特定の人間に仕事が集中していないか、人員は足りているのか、など企業が積極的に残業時間を減らす努力をし、従業員の意識改革を行っていくことが大切なのです。
(吉田 崇/社会保険労務士)
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