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航空業界を変えた「スカイマーク」が辿った末路

JIJICO / 2015年2月5日 13時0分

航空業界を変えた「スカイマーク」が辿った末路

航空業界を変えた「スカイマーク」が辿った末路

苦戦が続くスカイマークに就任したIT業界出身の社長

経営者は、業界に影響を与えるような大胆な改革をしなければ、縮小均衡という負の連鎖にとらわれ「ジリ貧」に陥ります。どんなに大きく広げた風呂敷でも、畳むことができれば名経営者と讃えられ、そうでなければ無謀といわれます。

スカイマークは1996年に、JAL、ANAの二大航空会社に対抗するための第三勢力として名乗りを上げました。しかし、新規参入は難しく苦戦が続きます。そんな中、2004年、中興の祖として知られるIT業界出身の西久保愼一社長(役職は当時)が就任します。

IT業界のセオリーを取り入れることで躍進を遂げた

既成業界には「他業界の成功法則を導入することで活性化する」というセオリーがあります。同じ業界の成功事例を真似れば「パクリ」といわれますが、別業界の成功事例を持ってくるのなら話は別。同じ業界では思いもつかなかったような新サービスが誕生するケースも多々あります。

事実、スカイマークはIT業界のセオリーを取り入れることで躍進しました。例を挙げると、「手取り足取りの細やかなサービスは不要」という人にあわせて、サービスを削減し価格を下げました。2012年には「機内での苦情は一切受け付けません」「客室乗務員に丁寧な言葉遣いを義務付けておりません」という内容の文章を客席ポケットに入れました。従来の航空会社とは異なるスタイルで機内サービスをしているから、という理由です。

報道によれば、方針に苦情があるのなら同社のお客さま相談センターか公共の消費生活センターに寄せるように呼びかけたとされています。これには、消費者庁から「民間会社のクレームセンターを公的機関に肩代わりさせるとは、いかがなものか」と客室ポケットの文書を回収するように要請されてしまいます。ただ、この「異なるスタイルで機内サービス」という考え方は、IT業界としては、まったく正しいのです。

一部の顧客を足切りし、サービスのない低価格モデルを確立

「人」が介入すると、その分の人件費は航空運賃に反映されます。機内での丁寧な言葉遣いなどは、飛ぶことや安全面とは関係ありません。それに、機内で苦情を訴える人は少数です。苦情を言わない大多数をサービス基準にすれば運賃は安くなります。

また、ネット予約には特別割引を適用しました。これは、ネットが使えない人には「乗って欲しくない」という意志表示とも取ることができます。つまり、「サービスを大多数にあわせて、はみ出した顧客は不要」という一種の足切りなのです。一見すると不遜ともいえる足切りは、IT業界から見れば極めて公平な考え方です。「不要なサービスにはお金を払いたくない」という顧客に受け入れられ、スカイマークは順調に業績を伸ばしました。

切り開いた道にLCCが参入し、さらに円安が追い打ち

しかし、その後に次々に参入してきたLCC(ローコストキャリア:格安航空会社)では、スカイマークが切り開いた「足切りの代わりに安い運賃」が当たり前のものとなりました。こうなると、スカイマークは多くのLCCと差別化を図ることが難しくなってきます。

スカイマークの対抗策としては、新たな道の開拓です。航空大手のドル箱であったビジネスクラスの乗客に狙いを定めました。ところが、軌道に乗せる前に、急激な環境の変化に襲われます。エアバスに対応するためパイロット、整備士などの訓練といった先行投資の最中、円安で外貨建ての航空機材が負担になり資金難に陥ったのです。そして、ついには自力再建を断念し、民事再生法の適用を申請するに至りました。

いわばスカイマークは、広げた風呂敷をこれから畳もうとしたとき、LCCと円安が滑り込んできてビリッと破れてしまった、というところでしょうか。

(木村 尚義/経営コンサルタント)

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