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派遣法改正案、廃案にすべき?

JIJICO / 2015年2月6日 9時0分

派遣法改正案、廃案にすべき?

派遣法改正案、廃案にすべき?

民主党の岡田代表、派遣法改正案の廃案を目指す考え

昨年の春に通常国会に提出されたものの、条文中に誤植が見つかり廃案。その後、誤りが修正され、秋の臨時国会に再提出されたにもかかわらず、野党の反発により審議が進まず、再び廃案となった「派遣法改正案」。

3度目の正直とばかりに、2015年1月30日、与党は派遣法改正案の修正を厚生労働省に申し入れました。これを受け、民主党の岡田代表は、「本質的な修正だと思えない」とし、引き続き廃案を目指す考えを示しています。

では、この「派遣法改正案」は具体的に何を変えようとしているのでしょうか。

すべての業種で同一の派遣社員を雇用できる期間が最長3年に

現在、特定26業種と呼ばれる専門職(エンジニア、通訳、秘書など)以外の職種において、派遣労働者を利用できる期間は最長3年とされています。例えば、ある会社で一般事務の仕事を派遣社員に頼みたい場合、3年を超えると、その事務仕事を派遣社員に行わせることはできなくなります。別の派遣社員を受け入れて行わせるということもできず、派遣社員を自社の正社員として雇用するか、別の自社社員に代わりにしてもらうしかないのです(ただ、これには後に述べる抜け道があり、それが派遣として働く人を苦しめています)。

これが、今回の改正案では、特定26業種が廃止され、すべての業種で同一の派遣社員を雇用できる期間が最長3年となります。その一方で、別の派遣社員を雇いさえすれば、同一職種であっても派遣を使い続けることができるようになります。つまり先述の事務仕事の場合、3年ごとに派遣会社から別の派遣社員を紹介してもらうことで、無期限で事務を派遣社員に担当してもらうことが可能になるのです。

「非正規雇用の拡大・固定化につながる」と野党は反発

では、この「改正案」、本当に野党が批判するように「悪法」なのでしょうか?

まず、今まで期限の上限なく同じ職場で働くことができていた特定26業種に該当する派遣社員が、3年ごとに働く場所を変えなければならなくなる点や、派遣労働者が正社員に転換される機会が減る可能性があります。野党が反対する理由も、今回の改正案で「非正規雇用の拡大・固定化につながる」という懸念からです。

現在の法律では、不安定な状況に置かれている派遣社員が存在

また、前述したように、現在の法律では3年を超えて同一職種で派遣労働者を利用することができません。ただ、3年経過後、3か月以上の「クーリング期間」を設ければ、再び派遣社員を雇用することが可能なのです。

つまり、3年間、事務として派遣社員を利用した後、一旦契約を解除し、その後3か月間は自社の社員などに事務仕事をさせた後、再び派遣社員を呼び戻すことが可能なのです。この「抜け道」により、派遣先から「3か月だけ休んでもらったら、また再契約するから」といった約束のもと、3か月間、無収入となったり、さらにひどい例だと、単なる口約束で結局、再契約してもらえないといった非常に不安定な状況に置かれている派遣社員が存在します。

あえて自由度の高い派遣を選択している人にとってはチャンス

それが、今回の改正では、同一人物が3年を超えて同一の職場で派遣として勤務することは不可能となりますので、すぐに次の派遣先で働くこととなり、継続的な勤務を確保しやすくなるともいえます。

企業としても、従来より派遣社員を活用しやすくなるため、派遣労働者の活用が増え、あえて派遣という自由度の高い働き方を選択している人にとってはチャンスともなるでしょう。また、今回の改正案では、派遣会社による雇用安定措置の実施も求められており、派遣社員としての立場も従来より安定するかもしれません。

野党が痛烈に批判するように「天下の悪法案」とも言い切れない今回の改正案。みなさんは、どう思いますか?

(吉田 崇/社会保険労務士)

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