インフレ時代到来に備える老後資金のつくり方
JIJICO / 2015年6月27日 18時0分
インフレ時代到来に備える老後資金のつくり方
インフレとは、物価が上がってお金の価値が下がること
インフレとは、簡単に言えば、物価が上がってお金の価値が下がることをいいます。日本銀行は、2%の物価上昇を目標に「量的・質的金融緩和」を導入しました。目標を達成していないのが現状ですが、物価を上げ、インフレの状態にする政策が取られているのです。
例えば、現在30歳の人が、年金をもらう65歳までの35年間、今後2%の物価上昇が続くとすると、10万円の物はいくらになるでしょうか。実は約20万円に値上がりします。約2倍の値段になるのです。
実質2%ずつ物価上昇が続くことは考えにくいですが、1%ずつ上昇するとしても10万円の物が約14万円になります。高齢の夫婦2人で生活する場合の平均額で考えると、現在は年約300万円ですが、それが約425万円かかる計算になります。それだけ、お金の価値が下がる可能性がある、ということです。
年金額も抑制され、予想以上に自己資金が必要になる可能性も
また、年金の計算方法も変わっています。将来の現役世代の保険料負担が重くなりすぎないように「マクロ経済スライド」が導入されました。インフレ率から「スライド調整率」を引いた改定率を毎年適用して、年金の給付額を決めていくものです。
スライド調整率は、年金財政を支える現役世代の減少率や平均余命の伸び率から算定され、平成27年度は1.1%となりそうです。物価が2%上がっても年金は0.9%しか上がらないため、必要額との差が開くことになります。
つまり、予想以上に自己資金が必要になる可能性がある、といえます。
投資運用などでお金に働いてもらうことを検討。不動産投資も人気
インフレ時は、お金の価値が下がるので、現金で置いておくと資産が目減りしてしまいます。つまり、インフレ率が2%だと、2%以上の利回りがなければどんどん資産が減ってしまう、ということです。預貯金ではその利回りは期待できず、保険などもインフレリスクには対応できないものが多いため、投資運用などでお金に働いてもらうことを検討しなければならないでしょう。
例えば、変動金利タイプの商品だと、景気の状況に合わせて金利がアップするため、比較的インフレに強い商品だといえます。10年物国債は他の投資と比べると低金利ではありますが、安全性が高く投資初心者でも買いやすい商品です。
最近、人気の「不動産投資」「J-REIT(日本の不動産に投資するファンド)」もお勧めです。不動産という現物があるため、景気の動向により値が変化することで、インフレにも対応できます。また、インフレは国ごとに起きるので、外国資産への投資もインフレリスクを回避できると考えられます。
しかし、投資全般には、価格変動・為替変動などのリスクがあることを忘れてはいけません。じっくりと検討し、分散投資などでリスクの軽減を図りましょう。
インフレに合わせ、貯蓄を収入に対する割合で考える
また、投資に消極的な考えを持つ人は、貯蓄にひと工夫をしてみるのも良いでしょう。本来、必要額を貯蓄で対応する時には、インフレで現金の価値が下がる分、多く貯蓄をしなければなりませんので、金額で考えず、収入に対する割合で考えてみるのです。
例えば、月30万の収入があり、3万円ずつ貯蓄をしている家庭は、収入の1割を貯蓄するという方針に変えます。収入が上がれば、それに対応して貯蓄額も増やすということです。一般的に物価が上昇すると収入もアップするので、金額に着目するよりは、インフレに合わせた貯蓄ができるでしょう。
ただし、数10%以上物価が上がった将来のために今のうちから準備を、と考えるあまり、無理な投資や貯蓄計画などを立て、現在の生活がままならなくなってしまっては本末転倒です。総合的に状況を判断した上で、それぞれに合った準備をしましょう。
(佐々木 茂樹/ファイナンシャルプランナー)
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