0増5減の次は9増9減、終わらない「1票の格差問題」
JIJICO / 2015年2月16日 13時0分
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0増5減の次は9増9減、終わらない「1票の格差問題」
「9増9減」案でも「1票の格差」は解消しない
衆議院議長の諮問機関である「衆院選挙制度に関する調査会」の会合で、小選挙区の都道府県への配分を宮城や沖縄など9県で各1減し、東京など6都県で1から3の計9増するという案が出ています。この案によれば、都道府県間の格差の最大は、現行の1.788倍から1.598倍になるそうです。この1.598倍は、議員1人当たりの有権者数が最小になる鳥取県と、最大になる滋賀県との格差です。
この調査会の案では、いわゆる「1票の格差」は解消しません。この1.598倍を1票の重みで表現すると、鳥取県に比べて滋賀県の有権者の1票の価値は0.625票ということになります。衆院選の小選挙区は、都道府県の中でさらに区割しますので、この0.6票よりも投票価値の不平等が拡大する可能性があります。定数1の県を作らない調査会の方針では、いつまで経っても格差は解消しません。なお、現在の選挙区割での不平等の最大格差は、宮城県第5区の1票に対する東京第1区での約0.46票です。
選挙方法を都道府県の境に合わせる必要はない
そもそも、投票価値の不平等は、国会で議員の多数決で議決されることの正当性を揺るがせる大問題です。国会の各院の議員は、1議員1票で投票をし、議員の過半数で法案が成立します。1議員1票の正当性は、同じ選挙で選出された議員の背後にいる選挙人が等しいからこそ認められるべきでしょう。また、投票価値の等しい選挙が実施されてこそ、仕組みとして国民の比較多数の支持が代表者である議員の構成に反映され得ます。しかし、投票価値の不平等な選挙では、国民の少数から選出された議員が多数を占めることになり、国民の多数意思が国会に反映されたとはいえなくなります。これでは、国民が「国会における代表者を通じて行動し」(憲法前文第1文)ということになりません。
本来、国会議員は「全国民を代表する」(憲法43条1項)のであって、選挙区や都道府県といった地域の代表ではありません。議員は選挙区に利益誘導するものだという考えがあるから、都市部選出議員が増えれば地方が衰退するなどという論が出てくるのでしょう。もし都道府県の枠にこだわらない投票価値の平等な選挙が実現すれば、政治家や有権者に「全国民の代表」を選出しようという意識改革も期待できるのではないでしょうか。我が国は、都道府県の連合体ではないため、選挙方法を都道府県の境に合わせる必要はないのです。
調査会は早急に実質的な1人1票の選挙制度・区割の答申を
この「1票の格差問題」で「地方に配慮している」というような話には根拠がありません。都会ではない選挙区の間でも投票価値の不平等はありますし、そのような不平等を生じさせる選挙区割に合理的な理由はありません。現行の北海道1区が0.47票であることや、9増9減案では鳥取の1票に対して「地方」である滋賀を0.6票にしていることからも、地方への配慮という論が幻想だとわかります。調査会は早急に実質的な1人1票の選挙制度・区割を答申して、1票の格差を是正すべきです。
なお、投票価値の不平等の際に、定数削減の話を紛れ込ませる政治家・論者がいます。定数削減で投票価値の不平等が解消されるわけではありませんから、そのようなことを言う人には気を付けなければならないでしょう。むしろ、国民の代表として法律を作り、行政をチェックする役割の国会議員を減らすのは、国民の意思を国政に反映させない考え方です。定数削減は、国民の意思を正しく国会に反映させようという投票価値の不平等の是正とは反対方向といえます。
(林 朋寛/弁護士)
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