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子どもの連れ去りを防いだ「家族の絆」

JIJICO / 2015年2月27日 18時0分

子どもの連れ去りを防いだ「家族の絆」

子どもの連れ去りを防いだ「家族の絆」

未遂に終わった群馬県の「小4少女連れ去り事件」に学ぶ

昨年より、子どもの連れ去り事件が相次いでいます。連れ去り防止のためにさまざまな対策がなされていますが、犯行者の巧妙な手口に不安を募らせる人も少なくないでしょう。今年1月には、群馬県で「小4少女連れ去り未遂事件」が発生し、現職警察官が容疑者として逮捕されました。

連れ去りから子どもたちを守るためには、私たち大人が手を差し伸べるだけでは足りません。子どもたちが犯罪被害に遭うのは、ひとりでいるときです。それゆえ、子ども自身が防犯意識を持つよう、防犯教育を根気よく続けなければなりません。そして、実を結んだのがこの「小4少女連れ去り未遂事件」です。この事件には、子どもを連れ去りから守るための重大なヒントが隠されています。

イベントや体験学習を通して記憶に残る防犯教育を

子どもたちへの防犯教育は、学校や子ども会などで行われています。家庭でも毎日のように言い聞かせていると思います。警視庁が考案した防犯標語「いかのおすし」や「4つの約束」など具体的な対策もあり、それになぞった体験学習も必要です。

成長過程にある子どもたちには、毎日のように新しい発見があります。私たち大人と違い、記憶の上書きが盛んに行われるので、同じことを繰り返すことが重要になります。防犯教育で重要なのは、子どもたちの理解度です。前述した「いかのおすし」では、「知らない人についていかない」「知らない人の車に乗らない」と教えますが、「知らない人」の定義は人それぞれです。また、犯罪が発生しやすい場所として「死角になる場所」が挙げられますが、「死角」には見えない、見えにくい場所のほかに、「見ない」「気にしない」場所が含まれることを忘れないでください。

そして、子どもたちの記憶に残すために「覚える」のではなく、行動として「身につく」ように教育していくことが重要です。子ども主体の「安全マップ」づくりは、会話の中から意識を高める言葉が集約され、危険個所を探すことで気づきを得るなど、イベントとして思い出に残る優れた防犯教育のひとつです。

少女が取った行動に注目すべきポイントが

未遂に終わった群馬県の事件をまとめてみます。知っているお巡りさんから「父親が交通事故でケガをした」と告げられた少女が、その場から逃げて母親に連絡。それを受けた母親は父親に電話し、父親が110番通報しました。この一連の行動を防犯教育(防犯訓練)の賜物と考えるのは、少々無理を感じます。

防犯教育では、「知らない人」には警戒するように教えますが、この少女は「知っている人」から「父親が交通事故だ」と声をかけられました。違和感を覚えながらも、恐怖やパニックに陥る可能性も考えられます。しかし、瞬時に少女は母親への連絡を選びました。ここが注目すべきポイントです。

連れ去りを防いだ家族のコミュニティー

人は、常に二者択一の選択をしているといわれています。知っているお巡りさんと母親の二者択一で、母親を選んだことが連れ去りを未然に防いだと考えられます。また、子どもを襲った異常事態を知った母親が躊躇(ちゅうちょ)なく父親に連絡したこと、父母ともに就業中でありながら連絡が取れたこと、この3点から家族の密接な関係がうかがえます。つまり、家族のコミュニティー(家庭環境)が連れ去りを未然に防ぎ、早期解決につながったと考えられます。

子どもたちへの防犯教育に間違いはありません。しかし、知識や経験の少ない子どもたちが頼れるのは家族だけです。「見たことのあるおまわりさん」が父親の事故を告げたとしても、迷いなく父母や兄弟など家族を信じてとっさに選べることが、子どもを守る「最良の防犯教育」と実感できます。こういった事件をきっかけに「家族の在り方」を見直してみてはいかがでしょう。

(神田 正範/防犯・防災コンサルタント)

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