低下する子どもの運動能力、現場から届く「スポーツ庁」への期待
JIJICO / 2015年6月21日 14時0分
低下する子どもの運動能力、現場から届く「スポーツ庁」への期待
子どもたちのスポーツ離れが深刻な問題に
2015年10月の設置が予定されているスポーツ庁は、「オリンピック・パラリンピック課」「競技力向上課」「スポーツ健康推進課」「スポーツ国際課」「政策課」の5課を設け、初代長官には国際大会での経験豊富な五輪メダリストなどの競技経験者を念頭に人選が進んでいます。当面は2020年のオリンピック・パラリンピックを運営的にも競技成績的にも成功へ導くことが最優先課題となるでしょう。
私も競技スポーツに関わる人間として、成功を楽しみにしている一人ですが、現在の日本では子どもたちのスポーツ離れが深刻な問題になっています。その問題解決こそが、結果的に競技力の向上にもつながります。
子どもの体力・運動能力は昭和60年ごろから低下傾向にある
昨今、日本の競技スポーツは記録も向上し、国際大会で活躍する選手も増え、競技力が上がっていることも事実です。しかし、それは一握りの専門的な指導を受けているアスリートに限られています。毎年、複数の公立小学校で陸上競技の指導をしていますが、年々、子どもたちの運動能力が落ちていることを肌で感じています。
特に都市部の子どもほど不器用になり、体力も低下し、40代の私の方が軽快に動けていると感じることも多々あります。実際に文部科学省が行っている「体力・運動能力調査」では、子どもの体力・運動能力が昭和60年ごろから低下傾向にあるという結果が出ています。
また、結果をその親の世代である30年前と比較すると、ほとんどのテスト項目において現在の子ども世代が親世代を下回っています。一方では、身長や体重などの体格については、逆に親の世代を上回っているということも、さらに深刻な事態だといえます。
子どもが不安なくスポーツに取り組める社会の構築が重要
現状、子どもたちのスポーツ離れにつながる一番の問題は、学業を重視し過ぎる社会なのかもしれません。一部のプロスポーツを除き、好きなスポーツに力を入れても将来が見えないのが現在の日本です。学生アスリートの学業支援、プロスポーツの振興やアスリートのセカンドキャリア支援などを充実させ、子どもたちが不安なくスポーツに取り組める社会にしていくことが大切ではないでしょうか。
子どもがスポーツに親しみ、大きな夢に挑戦しようとしても、周囲の大人が背中を押すことを躊躇するような社会では、ダイヤの原石も埋もれてしまいます。子どもたちが抱いた大きな夢に対して、大人たちが安心して背中を押してあげられるような社会の仕組みを、スポーツ庁が構築してくれることを期待しています。
(川口 博正/スポーツトレーナー)
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