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銀行預金口座にも適用「マイナンバー」がはらむ危険性

JIJICO / 2015年3月23日 13時0分

銀行預金口座にも適用「マイナンバー」がはらむ危険性

銀行預金口座にも適用「マイナンバー」がはらむ危険性

マイナンバー制度導入のメリットは?

国民ひとりひとりに12桁の番号を割り振る、共通番号(マイナンバー)制度の開始が今年秋以降に予定されています。10月には、ひとりひとりにマイナンバーが割り振られ、平成28年1月には、社会保障、税、災害対策の行政手続きでマイナンバーの利用が開始される予定です。また、平成29年からはマイナンバーを使った国機関での情報連携の開始も予定されています。

マイナンバー制度の導入によって、所得や他の行政サービスの受給状況を把握しやすくなるため、負担を不当に免れることや、給付を不正に受けることを防止するとともに、本当に困っている人にきめ細かな支援を行えるようになる(公平・公正な社会の実現)ことや、行政機関や地方公共団体などで、さまざまな情報の照合、転記、入力などに要している時間や労力が大幅に削減されることで複数の業務の間での連携が進み、作業の重複などの無駄が削減されるようになる(行政の効率化)といったメリットがあると説明されています。

また、国民の側でも、添付書類の削減など、行政手続きが簡素化され、国民の負担が軽減されることや、また、行政機関が持っている自分の情報を確認したり、行政機関からさまざまなサービスのお知らせを受け取ったりできるようになるなどのメリットがある(国民の利便性の向上)と政府は説明しています。具体的には、結婚やパスポート申請、遺産相続といった行政手続きに戸籍謄本の提出が不要になることや、予防接種・検診などの記録を転居などで取り扱い自治体が代わった際にも、引き継げるようになる、といったことです。

政府が国民の情報を監視することすら可能に?

しかし、マイナンバー制度には、DVなどで住民票を移さず転居したなど、住民票と現住所が一致しない人には番号が届かない可能性があり、そもそも弱者無視の制度ではないか、という疑問も呈されています。また、マイナンバーは個人の所得が発生するところにすべて関係するため、例えば、企業が社員に給料の支払いをするときには、社員のマイナンバーを集めて、「給与支払報告書」に記載のうえ、社員の住む地方公共団体に提出しなければならないなど、情報管理の問題も指摘されています。

さらには、Suica(スイカ)などの交通系ICカードやクレジットカードを紐付けすることで、政府が国民の情報を監視することすら可能になるのではないか、という批判もあります。そのような中で、マイナンバー制度について、政府は平成29年に預金口座へマイナンバーを適用する改正案を決定しました。実施された場合、新規に口座を開設する際は、開設時にマイナンバーを届け出ることになり、既存についてもマイナンバーを登録するようにするものです。当面、登録は任意で強制力はないのですが、将来的には義務化も検討するとされています。政府は、脱税などの防止のためとしていますが、政府が国民ひとりひとりの預金口座の存在や残高を把握できるようになり、極端に言えば政府が預金封鎖をしたり、預金残高に応じて課税することもできるようになる、という批判が多くなされています。

マイナンバー制度による利便性も一部の行政サービスにとどまる

弁護士の立場からは、マイナンバー制度による利便性も一部の行政サービスにとどまり(例えば、裁判手続きでは現在のところ利用は予定されていないようです)、すべての国民が利便性を実感できるとは思えません(結婚や相続もそんなに頻繁に繰り返すものではないですし、パスポートも10年有効です)。

行政サービスの効率化という点はメリットではありますが、行政の都合で国民の権利・情報を管理把握できる、ということは、潜在的な危険性の方が大きいように思います。現時点ではまだ運用が始まっていませんが、実際、開始した時点で本当に続けて良いのか、きちんと検証を行わなければいけないのではないでしょうか。

(半田 望/弁護士)

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