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相次ぐ大手企業のベア、中小企業の実態

JIJICO / 2015年3月30日 10時0分

相次ぐ大手企業のベア、中小企業の実態

相次ぐ大手企業のベア、中小企業の実態

大手企業を中心に過去最高額のベアが実施

2015年の春闘で、大手企業を中心に賃上げをするとの回答が相次ぎました。トヨタ自動車では、昨年の2,700円を上回り、過去最高額の平均月4,000円のベアを行うと回答。日産自動車でも、昨年の満額回答の3,500円を上回る月5,000円のベアを、電機メーカーでも大手6社が過去最高の昨年の3,000円のベアを行うとの回答が出されました。背景には、円安で好業績となったことが影響しているでしょう。

このように、好業績を背景に賃上げを決定する大手企業が相次いでいますが、その流れがそのまま中小企業にまで波及していくのかは未知数です。円安の影響で、特に輸出関連企業では中小企業においては賃上げどころではないという企業も多くあります。自動車部品を製造する中小企業の工場では、電気代や材料費の値上げ、コストダウンの圧力によって、仕事があっても経費や人件費を払えば赤字になるところもあります。

中小企業では人手不足が深刻な問題に

トヨタ自動車グループでは、下請け企業の過半数がリーマン・ショック前の水準に業績が回復していないのが実情です。他にも、輸入に頼る企業にとっても原料費が高く、その分をそのまま価格に転嫁できずに利益率が下がっている企業が多くあります。原油価格が落ち着いている状況にはありますが、いつまでも価格が下がっている状況ではなく先行きが不透明であることも懸念されます。

また、多くの中小企業で人手不足が深刻な問題となっています。これまでより多めの賃金を設定して求人を出しても応募がなく、人手不足に悩んでいる企業も増加。小売店では、店舗の閉鎖や営業時間の短縮を強いられているところもあります。生産年齢人口が減り続けているなかで良い人材を確保しようすれば、賃金や労働時間などの労働条件を良くしていく必要があります。

中小企業が賃上げしやすくなるような支援が必要

今いる人材も他に労働条件が良ければ、離職してしまうという悪循環になってしまいます。そのような状況にある中、他の企業より賃金を含め少しでも労働条件が良くなければ人材は集まりません。

日本全体に経済の好循環を実現させるためには大企業だけではなく、このように日本の企業数の99.9%、雇用の約7割を占める中小企業にまで賃上げできる状況にし、消費拡大を図っていく必要があります。大企業が好業績となっているのは、下請け企業の貢献があるからです。全体で賃上げが実現できれば、より一層の好循環を実現できるでしょう。国としても、中小企業が賃上げしやすくなるような支援が必要となります。

(松本 明親/社会保険労務士)

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