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部活動顧問、激務に追われる教師の責任

JIJICO / 2015年4月3日 10時0分

部活動顧問、激務に追われる教師の責任

部活動顧問、激務に追われる教師の責任

部活動中に倒れ障害が残った責任を学校側に認め、損害賠償4億円

平成19年に県立高校の硬式テニス部に所属していた女性が、部活動中に熱中症で倒れ、重度の障害が残ったのは学校側に責任があるとして、大阪高等裁判所は今年の1月、県に対して約4億円の損害賠償を認めました。また平成24年には、市立高校のバスケ部に所属する男子生徒が、顧問からの暴力を苦に自殺するという痛ましい事件もありました。

こういった部活動におけるトラブルは後を断ちません。本日は、公立中学校における部活動顧問の実態に焦点を当ててみたいと思います。

部活動顧問は、激務かつ重い責任を負った立場

わが国の中学校では、何十年も前から部活動が盛んに行われています。文化部もそうですが、特に運動部に関しては、土日にも練習や練習試合を行い、ほとんどの大会は週末に公式戦が組まれています。

現場で監督・指導にあたり、対外試合の引率をするのは、主に顧問の先生たちです。顧問の先生は、平日の日中は授業などの通常業務を行った上で、放課後や休日に部活動の指導を行っています。これが、ほとんどの公立中学校の現状です。

少し考えてみれば分かることですが、これは大変な激務です。授業の準備や宿題のチェック、試験の採点などは、部活動が終わってからやらざるを得ない場合もあります。かといって、部活中に生徒がけがなどをすれば、顧問が監督責任を問われる事態に発展しかねません。激務かつ重い責任を負った立場なのです。

「顧問になることを強制されている」ということが大きな問題

部活顧問をしているからといって、公立中学校の先生にはそれに見合う特段の手当てはありません。休日の部活指導に対する対価は3000円程度で、平日に関しては支給されません。「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」という法律にはっきりと、「教育職員には、時間外手当及び休日勤務手当を支給しない」と記載されています。

民間企業ではどうでしょうか。業態により差異はありますが、基本的には労働時間が1日8時間を超えた場合、残業代の支給が法律上認められています。ある意味で、最も大きな問題は「部活動の顧問になることを事実上強制されている」という実態です。「本来ならば積極的にやりたくない」と考えている先生も、学校内の部活動の数と先生の数のバランスから「やらざるを得ない」といったことがあるようです。

荒っぽい言い方になりますが、「やりたくもないことを半ば強制的にやらされた上に、それに見合う対価もない。何かトラブルがあれば重い責任を取らされる」。これが、公立中学校の部活動顧問の実態です。

部活顧問を拒否した教師は懲戒処分に科される?

もちろん、部活動指導などに熱意をもって取り組んでいる先生もたくさん存在します。これは、「日本が長年かけて培ってきた文化である」と言えるでしょう。しかし、民間企業であれば明らかに「ブラック企業」と揶揄されるような実態が存在します。「そのまま放置していていいのか」という問題意識が重要だと思います。

例えば、顧問を強制された先生がボイコットしたとしましょう。それを理由に懲戒処分等を受けたとして、その先生が裁判により懲戒処分の取り消しを求めた場合、裁判所がどういった判断を下すか。懲戒処分を受けた先生側が勝訴する余地は、相当程度あるのではないかと思います。

(河野 晃/弁護士)

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