よく分かる「安保法制」、結局は何が変わる?
JIJICO / 2015年4月5日 17時0分
よく分かる「安保法制」、結局は何が変わる?
自衛隊の活動範囲は拡大
集団的自衛権の行使が可能となる安全保障法制関連法案が5月中旬にも閣議決定され、国会に提出される見通しとなりました。この関連法案は、概ね下記が主な項目と判断することができそうです。
1. 武力攻撃に至らない侵害への対処
2. 日本の平和と安全に資する活動を行う他国軍隊に対する支援活動
3. 国際社会の平和と安全への一層の貢献
4. 集団的自衛権の行使を含む自衛の措置
5. 船舶検査
6. 他国軍隊に対する物品・役務の提供
7. 在外邦人の救出
これにより自衛隊の活動範囲は拡大しますが、中でも「4」は憲法9条との関係により、国会でも激しい議論が予想されます。ほかにも法案に関する論点は数多くありますが、ここでは「集団的自衛権の行使を含む自衛の措置」と憲法の問題をみていきます。
憲法上許容されないとの結論に
集団的自衛権とは、一般に自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにも関わらず、実力をもって阻止する国際法上の権利であるとされています。これについて、従来、政府は憲法9条2項を次のように解釈し、集団的自衛権の行使は許されないとしてきました。
自衛隊は、自衛のための必要最小限度の実力組織であり、憲法9条2項にいう「陸海空軍その他の戦力」に該当しない。また、我が国に対する武力攻撃が発生した場合にこれを排除するための必要最小限度の実力の行使を除いて、武力の行使が許されない、とするものです。
そして、この必要最小限度の実力の行使、すなわち自衛権の発動の要件として、我が国に対する急迫不正の侵害があること(武力攻撃の発生)、これを排除するために他の適当な手段がないこと、必要最小限度にとどまることを挙げています。従って、集団的自衛権の行使は、武力攻撃の発生という要件を満たさないため、憲法上許容されないとの結論になります。
戦争を遂行するのに必要な軍事力整備も可能に
これに対して、平成26年7月の閣議決定は、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使すること」も憲法上許容されているとしています。
この立場は、憲法9条2項を我が国が当事国である国際紛争を解決するための武力の威嚇・行使をするため(侵略目的)の戦力保持を禁止し、交戦権も認めない規定であると解釈。それ以外の目的(例えば、集団的・個別的自衛権の行使、国際貢献など)のためであれば、それに必要な戦力を保持し得るとするものです。そのため、憲法上、集団的自衛権の行使をはじめ国際法上適法とされる戦争を遂行するのに必要な軍事力を具備することも可能との帰結になります。
広く国民的議論の場が必要
国の防衛は、的確に国際情勢を見極めたうえで、自衛隊等の実力組織だけでなく、外交その他各種交流など、多チャンネルを駆使することで成り立つものであることに異論はありません。集団的自衛権に関する筆者の考えは別の機会に譲るとして、一部の人だけでなく、幅広い国民が国の防衛をどうするかということにもっと関心を抱き、意見を発信していくことが肝要かと考えます。
その意味では、昨年の閣議決定及び今回の安保法制関連法案は、これまでの憲法解釈、外交防衛政策の転換をもたらすものですから、広く国民的議論の場が必要で、その過程で有権者も真剣に考え、意見が整理されていくのではないでしょうか。
(長谷川 武治/弁護士)
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