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あの「正露丸のラッパメロディー」も…音や色にまで拡大した商標権

JIJICO / 2015年4月10日 18時0分

あの「正露丸のラッパメロディー」も…音や色にまで拡大した商標権

あの「正露丸のラッパメロディー」も…音や色にまで拡大した商標権

今年4月から「新しいタイプの商標」が登録可能に

今月に入って、「正露丸のラッパメロディーが商標登録出願された」と一部メディアで報道されました。これは、今年4月から「新しいタイプの商標」がわが国で登録可能となったことによるものですが、一体何が「新しい」のでしょうか?

詳しく見ていくにあたり、まず「商標」について説明します。商標とは、「自他商品」あるいは「役務(えきむ)識別標識」などと言いますが、簡単に言ってしまえば、自社の商品やサービス(以下「商品等」と言います)と、他社の商品等を区別するために付けたビジネス上の目印です。

従って、商標法においては商標が目印として機能するように、登録要件として大きく「他社と区別する能力があるか(自他商品等識別力)」「他社の商標と同一あるいは類似し混同が生じないか(商標の独自性)」、これら2つの要件を満たすことを条件に商標登録するとしています。

「音」のほか「動き」「ホログラム」など新しい5つが商標に

次に、「従来の商標」と「新しいタイプの商標」についてお話します。従来、商標法上の商標は「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩の結合であって、業として商品等に使用するもの」と規定されており、その構成要素から、人間の知覚(視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚)のうち「視覚で捉えられるもの」に限定されており、さらに「静止しているもの」に限定されていました。4月から商標登録が認められるようになった商標は、「動き」「ホログラム」「色彩のみ」「音」及び「位置」に関する5つで、具体的には以下の通りです。

(1)動き商標=文字や図形等が時間の経過に伴って変化する商標。

(2)ホログラム商標=文字や図形等がホログラフィーその他の方法により変化する商標。「動き商標」及び「ホログラム商標」は、「静止しているもの」しか登録を認めなかった従来の商標に加えて、「動き」等の「変化」という構成要素も認めるものです。

(3)色彩のみからなる商標=単色又は複数の色彩の組合せのみからなる商標。
「色彩のみからなる商標」は、従来「色彩」は商標の構成要素のうち付随的要素であったものを、主要素として認めるものです。

(4)音商標=使われるサウンドロゴやパソコンの起動音など。正露丸のラッパメロディーはこれに該当します。「音商標」は従来、知覚のうち視覚のみに限定されたものを、聴覚にまで拡大するものです。

(5)位置商標=文字や図形等の標章を商品等に付す位置が特定される商標。「位置商標」は、商標を構成する付随的要素を新たに追加するものです。

近い将来、味覚・臭覚・触角の商標登録も認められる日が来る?

商標とは、自社商品等を他社商品等と区別するために使用するビジネス上の目印であり、その区別をする判断主体は消費者です。例えば、ラッパメロディーをラジオで聴いたのがきっかけで、大幸薬品の正露丸を購入した人がいたとします。本来であれば、このラッパメロディーがその人に対する目印(商標)であったわけですが、今までは商標権を取得できず、消費者が目印とするものと真の商標との間に齟齬(そご)がありました。しかし、今後は「真の商標権」を取得し、ブランディングできるわけです。

このたび「新しいタイプの商標」の保護制度が導入されたことにより、ビジネス上の目印として、音や色彩、動き等を活用していた場合には、自社の商品の「真の目印が何なのか」を考えるきっかけになると思われます。

また、今回は知覚のうち聴覚まで拡大されましたが、消費者が区別できるのであれば、味覚、臭覚、触覚で知覚できるものも目印になります。実際、国によっては商標登録が認められているところもあって、近い将来、日本でも認められるようになるかもしれません。例えば、「ラーメンのスープの味」も商標権取得ができるようになるかもしれません。

(茅原 裕二/弁理士)

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