多様化する21世紀の教室に応じて求められる教育改革
JIJICO / 2015年5月11日 10時0分
多様化する21世紀の教室に応じて求められる教育改革
1クラスに3人前後はLGBTの可能性を持つ子どもがいる
文部科学省は、性同一性障害の子どもがいじめを受けて不登校、ひいては自殺につながるケースも考えられるとして、その心情等に十分配慮した対応を求める通知を全国の教育委員会に出しました。
世界各地で同性婚が認められ、日本でも渋谷区で「同性パートナーシップ証明」を発行する条例案が可決されるなど、世の中の流れからすれば当然の措置といえるでしょう。電通の調査によれば、性的マイノリティーの割合は7.6%であり、単純計算で1クラスに3人前後はLGBTの可能性を持つ生徒がいても不思議ではありません。
「集団画一教育」にはどう考えても無理がある
さらに、特別支援学級の児童生徒(全体の2.7%)に加え、発達障害のある子どもは通常学級で6.5%程度いると推定されており、1クラスに2~3人いる計算になります。この他、不登校の中学生は全体の2.7%で、中学校では平均すると1クラスに1人は不登校の生徒がいるのです。このように、21世紀の教室は非常に多様化しています。
そもそも学力だけを取り上げてみても各科目で評価1から5まであり、生徒の理解度に大きな差があるのは明らかです。それにもかかわらず、生まれた年月だけで機械的に学年分けされ、全員一律同じ教科書を使って同じ時間割に沿って同じ授業を受け、毎年4月になれば全員自動的に進級するという「集団画一教育」はどう考えても無理があります。そのしわ寄せが不登校や落ちこぼれという形で噴き出しているのです。
個別カリキュラムを導入することが急務
体重100キロの人も50キロの人も、無理やり同じMサイズの既製服を着せられたのでは、裾上げや丈詰めといった小手先の修正では限界があるように、集団画一教育も小刻みな対症療法でお茶を濁していては遅かれ早かれ破綻します。
巷では現実との乖離を埋めるとして68年前に施行された憲法の改正論議が盛んですが、それと同様に、多様化した21世紀の教室にはそぐわない明治以来100年以上続く集団画一教育を抜本的に転換して、子どもたち一人ひとりの学力や集中力、持久力、性格、興味関心、目標などに合わせる個別カリキュラムを導入することが急務です。
教育特区制度を利用してでも改革を実行すべき
個別カリキュラムを導入すると、学力や単元によって生徒の学習達成状況に差が生じるため、実質的に年齢基準の学年は消滅します。ただし、集団画一教育の転換には心理的な抵抗も予想されるため、まずは授業から遅れている生徒を対象に、放課後や休日を利用して教育効果が表れやすい算数・数学で個別型補習指導を試験的に始めることが現実的です。
その後、対象を一般生徒にも拡大して、科目も主要5教科から全教科へと段階的に増やしていきます。このような抜本的な教育改革が現在の教育基本法や学習指導要領の枠内で実現困難なのであれば、教育特区制度を利用してでも実行すべきです。
個別カリキュラムの導入で学習塾の必要性は低くなる
日本の教育に対する公財政支出は、対GDP比でOECD諸国の中で最低水準であるにもかかわらず、PISAなど国際的な学習到達度調査では日本は常に上位にランクインしています。これが国民の大多数が教育の現状に対して危機感を持たない理由かもしれません。
しかし、この好成績を経済的に支えているのは、他国に比べて突出して高い比率の私立学校(学校教育に占める割合3割超)や塾・習い事等に対する支出(市場規模1兆円)だともいわれています。
つまり、他の国では税金で賄っている教育費を家計から負担することで、公立の学校教育では十分に手が行き届かない点を、塾通いなどで個別に穴埋めすることを余儀なくされているのです。一人ひとりに対応した個別カリキュラムが公的教育に導入されればされるほど、学習塾の必要性は低くなっていくはずです。
(小松 健司/個別指導塾塾長)
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